暁 〜小説投稿サイト〜
現実世界は理不尽に満ちている!
第66話
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〉の通信機器で大使館へと送信しなかった。

 そうか、そういうことだったのか。真田は理解し、そして納得した。

 「それでは、私はこれで」

 真田は辞去の言葉を口すると共に、ヤマト式の敬礼をする。それに対し、カーゼットもガミラス式の敬礼を返した。

 真田が扉へ向かい、キーマンが続こうとした時だった。

 「そうそう、キーマン中尉」

 カーゼットが思い出したかのように、声を掛けて来たのだ。声を掛けられたキーマンは振り返り、その声が聞こえた真田はキーマンと同じく足を止めた。

 「君に代わる駐在武官の件について、話がしたい」

 「……」

 無言で視線を向けてくるキーマンに、真田は察した。どうやら、先に帰っていたほうがよい内容のようだ。

 「では、先に」

 それに対し、キーマンは謝った。

 「すまない、副長」

 真田は頷くと、貴賓室を後にした。


 ……
 …

 「……」

 キーマンはしばしの間、既に閉じられ、そして内側からロックされている扉を無言で見つめていた。今頃は、待機していた警衛が真田を外へ案内しているだろう。

 キーマンは、カーゼットに向き直った。彼の視線に気づいていないのだろう。何か薄汚いものにでも触れたかのように、彼が右手を払っていた時だった。

 「…っ!?」

 キーマンの視線に気づいたカーゼットは、威儀を正した。士官達も同様だった。彼らは一斉に膝をつき、頭を垂れる。
 傅く姿勢のそれは、まるで臣下の礼であるようだ。一介の中尉に、何故そのような事をするのか。

 「……」

 しかし、キーマンは驚かない。いつもの無表情だが、今の彼は”〈ヤマト〉の面々に見せていない別の顔”であった。

 「も、申し訳ございません!本来ならば、貴方様にこのような御役目を負わせるなど―――」

 王家の人間と対面しているような、恭しい口調で言うカーゼット。彼の顔には、言葉通り本当に申し訳ない色があった。

 「余計な話は必要ない」

 そんなカーゼットを、キーマンは断ち切った。畏怖しているかのように震えているカーゼットを一瞥すると、彼は短く告げる。

 「”アレ”は手に入ったのだろうな?」

 「は、はっ!勿論でございます」

 カーゼットは女性士官に目配せすると、彼女はサッと立ち上がると同時に絵画のほうへ寄っていく。両手が立体映像として擬態していた絵画へと差し伸ばされると、スルリと潜り込んでいく。
 やがて、”アレ”が入っている漆黒のアタッシュケースを取り出した女性士官は、キーマンの前に進み出る。そして彼女は掲げ持つ仕種で、それを差し出した。

 カーゼットが告げる。

 「”我々”と〈ヤマト〉を引き合わせる貴方様
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