第59話「第十一番惑星、救出作戦を開始する!」
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元の黒子がチャームポイントだろう。
「そうだ、緊急連絡用のヤツだ」
画面を切り替えると宇宙船の3D画像が表示され、内部構造と諸元が並ぶ。高速艇〈シーボルト〉はサイズこそ小型舟艇であるが、民間の宇宙船にも標準装備されている―――ワープが可能な艦となっている。
避難民にも観えるよう、斎藤は脇へと退けた。避難民は身を乗り出し、画面に映る〈シーボルト〉を食い入るように見つめる。
「コイツで脱出する」
斎藤は笑みを浮かべ、その画面に映る〈シーボルト〉を親指で指さした。
「無理だ!」
即座に、レドラウズ教授は言い放つ。彼は落胆し、目を逸らしていた。
「とても全員は乗れない」
レドラウズ教授の言う通り、全員は乗れない。〈シーボルト〉船体の殆どは、加速用のブースターとワープ機関に占められている。操縦士は1名のみであり、操縦士以外に無理に搭乗させれたとしても数人が限界だ。
「せめて、子供達だけでも…」
レドラウズ教授はそう言うが、それは無理だろう。その子供達だって、何人もいるのだ。倉田は左腰に左手を置き、天を仰ぐ。
「子供達を乗せてちゃぁ、包囲網突破の無茶な操縦などうしたって無理だ」
軌道上に展開するガトランティス艦隊の規模はどれほどか、現状ではその全容を掴められていない。この施設からの通信波は妨害され、設置されている簡易レーダーでの観測も難しい状態だ。ただ、攻撃の規模から空母を中心とした機動艦隊であるのは判っている。
それでも〈シーボルト〉が軌道上へ出れば、攻撃を受けるのは明白だ。ましてや武装はおろか、波動防壁すら搭載されていないのだ。子供達だけでは、倉田の言う通り包囲網突破は無理だ。
「その通り。此処は、お前に賭けるしかねぇ」
大きく頷いた斎藤に、倉田と天城も続く。それに対し、永倉は訝しんだ。皆して、自分に顔を向けているからだ。
「え、ちょ、ちょっと、あたしが?なんで?…まさか、あたしが女だからっていうんじゃないでしょうね?」
隊長と同僚に注がれる視線に戸惑う永倉は、隊長―――斎藤へ睨みつけながら訪ねた。斎藤は苦笑いを浮かべ、睨みつけている彼女へ歩み寄った。
「地獄の底に、助けの船を引っ張って来るんだ。お前にしか、出来ねぇよ」
背の高い斎藤の顔を、永倉は仰いだ。自分を見下ろす彼の瞳には、決死の色があった。助けを連れて来るまで待つ、と言外に告げているのだ。此処を死守し避難民をこれ以上、一人たりとも死なせないという覚悟を斎藤達は宿している。
「…はぁ」
その眼差しに耐えられるなくなったのか、永倉はぷいっと背中を向けた。
「貸しだよ、隊長」
彼女は歩き出し、その場を後にした。
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