第54話「ほほう…」
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「気にするな。お前が噛みついたせいじゃない」
「儂らの気持ちを、上が分かる筈も無い」
徳川は、〈ヤマト〉へと目を転じた。彼に釣られて、他の仲間達も同様に〈ヤマト〉へと目を転じた。地球連邦政府は自分達の気持ちを分かっていたとしても、利益を優先するだろう。
相原がポツリと言う。
「3年前の航海で、地球は救われた筈ですよね」
岬と桐生が口を開く。
「異星の人とも手を取り合える…」
「その可能性を携えて、〈ヤマト〉は帰って来た」
利益を優先するあまり、助けを求める声を無視する地球連邦政府。悲痛な面持ちで、南部が項垂れる。
「今の地球は、これでいいのかよ…!」
古代は、仲間達一人一人を改めて見た。南部のように感情を表に出すことはしないが、裡にはやるせない気持ちがあると一目で分かる。誰もが、今の地球に憤っているのだ。重々しい空気が流れる中、古代は口を開く。
「俺達は、もうこの世に居ない、大切な人から何かを語り掛けられた。大きな災いが宇宙の何処かで起きようとしている。その事を言葉では無く、心で感じ取らされた」
皆、あの日に見た幻を思い出していた。1人の女性―――雪を除いて。俯きそうになるのを我慢して、皆と同様に古代を見ていた。
「今の地球政府は分かろうともしない。彼らに見えるのは、現実の光景だけだ。生きる為に、地球の主権を守る為に…。…でもそれは、間違った未来に突き進むことではないのか?このままでは、…死んでしまった者達へと顔向け出来ない!」
そうだ、と一同は頷いた。古代は、決然と切り出す。
「俺は、〈ヤマト〉でテレザートに向かいたい!皆、力を貸してくれ!」
全員が、古代に見入っていた。幻を見ていない雪でさえ、胸の裡から吐き出す古代に圧倒されていた。
『……』
答えは無い。この場に流れる空気が、一層に重さを増していた。誰もが俄に意思表示が出来る問題ではなかった。
「……」
島は、苦渋の表情を浮かべていた。自分には家族がいる、母さんと弟がいるんだ。そう簡単には、決めることは出来ない。そう思う最中、真田が古代の手を取る。
「行こう」
古代の手を取っている真田は告げる。
「今の地球に、〈ヤマト〉の居場所は無い。だからこそ、真実を突き止めよう。それこそが今、我々がやらねばならないこと。〈ヤマト〉と共に生きた、我々の道なんだ」
2人の手を包むように、徳川の大きな手が置かれる。
「沖田さんがきっと導いてくれる」
真田と徳川の意思表示―――決意が、他の仲間達の背中を押した。
「そうだ、行こう!」
相原が、拳を天へ挙げた。それに続き、島と雪を除く
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