第50話
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べる。今の私には、大切で好きな人が―――彼がいる。
「す、すまない。その…」
軽率さを詫びる古代に、雪はクスリっと笑う。もう気にしていない雪だが、そんな彼を彼女は更に好きになった。首を左右に振り、テーブルに肘をついた。
「古代君こそ、いいの?」
顔を古代へ近づけ、雪は可愛らしく小首を傾げる。
「この4年間の記憶しかない奥さん、不安にならない?」
不安ではないが聞いた。それだけである。まぁ、もし浮気でもしたら”お仕置き”しようかなと心の中で悪い笑みを浮かべているが、古代は気づかない。最も、古代にしても雪にしても一筋なのだから浮気はあり得ないのだが。
「必要なのは、この4年間の想い出だろ」
古代の答えは、力強いものだった。彼は顔を近づけ、机に右腕を乗せた。
「イスカンダルまでの航海とその3年間は、楽ではなかったと思う。今だって、楽だとは言えない」
でも、と古代は続ける。
「俺達は生きている」
『古代』
「!?」
不意に、沖田の顔が浮かぶ。あの時に見た、沖田の顔を。
「古代君?」
キョトンっとする雪。突然と苦い顔を浮かべるとは、体調でも悪いのだろうか。しかし、それは杞憂に終わったようだ。苦い顔から真剣な顔へと一変した古代は言う。
「前だけを、明日を歩もう。地球で亡くなった人達や〈ヤマト〉で亡くなった仲間達、色んな人達に報いる為に、幸せになる義務がある。勿論、今を生きている大切な人達の為にも―――」
「古代君」
雪は、古代の手を握る。優しく、包み込むように。
「古代君。私ね、〈ヤマト〉に乗って直ぐの頃は、とにかく取り繕うのに必死で余裕が無くて…あまり、幸せだと思えなかったの。この先、私の人生ってどうなっていくんだろうって、よく考えてた。けれど、第一艦橋の皆や沢山のクルーに出会えて…家族になれて、幸せってこういうことなのかなって思えたの。古代君はね、私の中での一番の宝物なの。だから、結婚式ね、楽しみで仕方ない」
「雪…」
出会って間もなかった頃の雪は今のように笑わず、真面目で気が強かった。最初はそんな彼女の態度に戸惑い、衝突することもあった。でも、そんな彼女が今はこうして傍で笑ってくれて、幸せなんだと心から言っている。これ程までに、嬉しいことはない。
「私、とっくに幸せだよ」
雪は愛おしく古代の手を包み、彼の顔を優しく見つめる。彼女の薬指にある指輪は、輝いていた。
―――ブリリアンス・ギルド駐地球大使館。
端末上に小さなホログラムディスプレイに1人の人物―――ギルド長スヴェートが映し出される。サングラスに隠れたリンガルの赤い瞳を、ホログラムとなって投影さ
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