第50話
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また、助けられたな。フッと笑みを受けべた古代は前を向き、大きく息を吸い込むや口を開く。
「申し訳ありません!古代進、猛省致します!!」
雪に見習って、精一杯の気持ちを叫ぶ。そのまま顔を見合わせ、反応を待つ。けれど、段々可笑しくなり、2人して笑い合った。
「ふふっ、あはははっ!」
「あははっ、はははっ!」
子供のように笑顔を綻ばせて笑う雪。その顔を見て、古代は改めて安堵した。ああ、守れてよかった…。査問会と予備裁判の事は、忘却の彼方へと消えた。
―――首都、某カフェ。
たまたま見つけたカフェで、古代と雪は一服していた。向かい合って座る木製テーブルには、式場のパンフレットが置かれている。ガミラスとの戦争で人口が半分以上も減ったこともあり、政府は若者の結婚や出産支援などに積極的だった。古代と雪が足を運んだ式場では、ニュースとして取り上げられていた。祝御出産、祝御成婚といった文字が踊り、若い男女が新しい地球を作るのだと謳っていた。
カフェの窓から見える人々の表情は明るい。復興は目覚ましいものだ。市街地の外に広がる荒野は、この数ヶ月で大きく後退している。とはいえ、急速な復興にエネルギーの供給が追いつかない。その理由として、行政の中枢や商業地区に優先されている為だ。だが、今は違う。同盟国―――ブリリアンスからのエネルギー供給により、それは追いつきつつある。2ヶ月間前に広報として表示された『計画停電解除のお知らせ』が、改善された証。
最も、地球の復興を実感するのは空だろう。高層ビルの上は雲一つ無い青空が広がっている。地下都市からは、それを見ることは絶対に叶わかった。見上げても、あるのは天井。建物の中という意味ではなく、地下都市の遥か上は天井そのものだった。
しかし、今は違う。地下都市は最低限のメンテナンスを除き、地下での生活は無くなり、地上での生活となった。
「凄いよね。こうしていると、昔の地球に戻ったみたい」
雪はコーヒーを一口飲む。合成ではないコーヒーを、だ。合成ではないコーヒーは、今では当たり前に飲めるようになった。
「もしかして、記憶が?」
古代の言葉に、雪はハッと口を噤んだ。思わずコーヒへ視線を落としてしまう。雪には、4年前までの記憶が無い。清浄な大気も、緑豊か自然も、青空も、青い海も、あの頃の彼女にとって記憶ではなく知識だった。宇宙空間に存在する青く輝く宝石のような地球を目にしても、自分だけが初めて見る宝石。
だから、イスカンダルを見た時の不思議な気持ちが忘れられない。胸いっぱいに新鮮な空気を吸って吐き出した時、何か懐かしいものが胸の奥から込み上げた。記憶が失っても、心が憶えている。コーヒへ落としていた視線を古代へ向け、穏やかな笑みを浮か
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