第50話
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に古代はようやく気づいた。
「たっぷりと絞られたから、疲れたかも。色々と言われたよ。『貴様は自分のした事の意味が分かっているのか』ってね」
尋問してきた上官の口調を少し真似て、雪の問いに答える。
「『地球を救いましたが、何か?』」
尋問中に心の内で思っていた古代の心情を、雪がピタリと代弁する。雪が言い当てた台詞に、思わず笑いが零れる。
「はははっ、言えない言えない」
「言っちゃえ言っちゃえ。此処なら誰も聞いてないよ」
「え?」
面食らった古代は、雪へ顔を向ける。すると、雪はハンドルを握ったまま青空へ顔を少しだけ上げ、大きく口を開いた。
「古代進は、地球を救ったぞー!感謝しろー!これで二度目だぞぉー!!」
「ゆ、雪…」
雪は、軍内だけでの姿を見ていると、誰からも一目置かれる礼儀正しく大人しい女性だ。けれど、〈ヤマト〉時代から長く付き合う中で、実は大胆で活発的な人なんだと気づかされた。彼女のこの性格に古代はこれまで何度も助けられ、支えられた。けど、今回に限っては…。
「雪…そんな風に言わないでくれ。正直言うと、俺…」
躊躇いがちな古代の口調に、何か察したのだろうか。雪が、空を見上げていた顔を下ろし視線だけを俺に向けて口を閉じた。
「俺…あの時、地球を助けようだなんて…思ってなかったんだ」
正直な告白に、雪の瞳が見開く。だが古代は、雪に嘘をつきたくなかった。
「ガトランティス艦が地球に落下すると聞いて、真っ先に思った事は……君の安否だった」
勿論、あれほどの質量を持つガトランティス戦艦が地球に落下するとどうなるかは分かっていたし、軍人として自分がどうすべきかも理解していたつもりだ。けど、その場所に誰が居るのか、あそこには雪がいるのに。このままじゃ、雪が…雪が…っ、何としてでも、助けないと…!古代の感情は、それただ一つだった。
「…相原や南部達に命令しながらも、俺が考えてたのは君の事…自分にとって凄い大事で大切な人を助けたいって、そればかりだった。だから、地球を助けたなんて、大それた事は考えてない」
古代は、重くなってしまった空気を誤魔化すように笑顔を作った。雪は、古代へ静かに顔を向けていた。
「でも、古代君はそれでも…」
雪は再度青空へ黄色の双眸を向け、先程よりも大きな口を開けて息を吸い込んだ。
「古代進は立派な艦長だー!森雪は、すっっっごく心配したんだぞぉー!!」
全身全霊を込めた、雪の叫び。その言葉は、真っ直ぐと古代の心に響いた。そうだ、〈ゆうなぎ〉の行動は司令部に筒抜けで、雪もその情報や映像を観ていた。自分の為に喜び、心配してくれた彼女がどう思っていたのか、容易に想像が出来た。
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