暁 〜小説投稿サイト〜
現実世界は理不尽に満ちている!
第48話「就役式典」
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
のように滑らかで女性特有の柔らかさがあった。

 常に黒サングラスを掛け黒スーツ姿である彼女の名前は、リンガル・フォーネット。黒サングラスを掛けているため瞳からの感情は分からないが、クラウスは見た。彼女の口元が緩んでいるのを。なるほど、リンガルとしては前者か。

 ペネット大統領の演説に続いて、式典は命名式に移行する。

 「これより、命名式に移ります!」

 士官が封書を開き、アンドロメダ級4隻の名称を読み上げた。二番艦〈アルデバラン〉、三番艦〈アポロノーム〉、四番艦〈アキレス〉、五番艦〈アンタレス〉、それぞれは神話に登場する女性の名前が与えられている。

 「何故、教えていただけなかったのですか」

 今まで静かであった5人の内の1人、ガミラス大使―――ローレン・バレルは顔を動かさず口を開いた。紫色の短髪をし、顎鬚と繋がる容姿をしている。年齢は47歳。文官肌で思慮深いバレル大使は、時には剛腕とも言える外交手腕を発揮する。
 彼の声音は、問いかけだった。それは藤堂と統括副司令長官―――芹沢に向けられていた。彼は続ける。

 「ガトランティスの兵は、肉体に所定の処置を施さねば自爆する。そのように造られているのです」

 バレル大使は語る。失敗に終わった敵艦の首都特攻事件の後、唯一の生き残りを研究施設へ移送し生体データの収集に努めていなければ、元ヤマトクルーの女性を除き、研究者が死亡することは無かった。ガトランティス兵は人の形をした、兵器のような存在なのだ。

 「我々に一報してくだされば」

 何故、黙っていたのか。生体データを収集するにしても、ガミラスであれば自爆防止処理が施せるのだと。問い続けるバレル大使を、芹沢が抗弁する。

 「お言葉ですが、重要な情報を今更開示されるというのはどうも―――」

 「我々の落ち度であると?」

 バレル大使は芹沢の言葉を遮り、訊き返す。それに、藤堂は困惑する声音を漂わせながら言葉を発する。

 「いいえ、しかしせめて共同作戦の実施前に―――」

 「確かに、過去に不幸な行き違いはありました」

 「……」

 藤堂が話し始めたところで、芹沢が声を被せてきた。それに対し藤堂は彼へ視線を送ったが、当人は構わず続けた。藤堂は、ほんの少し悲しくなった。

 「しかし、今やガミラスは同盟国です。対等なパートナーであると信じております」

 鐘の音が、辺り一帯へ響き渡る。この鐘は、滑走台に設えている安全装置を外した合図だ。その合図から少しして、アナウンスが流れた。「支網切断」が行われる旨を、だ。

 ペネット大統領の演説が終わると、かつて欧州管区の行政局長を務めた初老の女性が現れた。彼女はペネット大統領へ一例すると、係員から恭しく差し出された銀の斧を
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ