第28話:勇者の計算外その6
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
セインperspective
僕は追い詰められていた。
『妖精の粉』の入手に失敗し、オーサムにある聖剣の入手に失敗し、ベルディア討伐に失敗し……いや、あんな化物誰が倒せる!
だが、今はそんな事をツッコんでいる場合じゃない。
せめてドワーフの奴隷を手に入れなければならない状況になってしまった。
本当なら、あんな毛深くて樽の様な体型のモグラ人間に興味を示してる暇は無いのだが……何の手柄も無く円卓会議に参加する事になるのだけは避けたい!
だから、勇者である僕がわざわざ足を向けてやったと言うのに……
「聞いたぞ、バゼルフ?あんた、鍛冶が得意なドワーフの中でも一級品なんだって?」
しかし、金床の前に座しているバゼルフは、仏頂面のまま、この僕と顔を合わせようともしない。
勇者である僕に向かってそれだと?
偏屈を通り越して無礼千万だぞ!
「フン。誰に聞いたか知らんが―――」
「そんな事はどうでも良い。僕は世界の為に魔王を倒す運命を背負う勇者だ。協力しろ」
「帰れ。ものの頼み方を知らん若造が」
それで職人気質を気取っている心算か?
節穴め!
「僕は、勇者なんだ、正しい存在なんだよ。歴史に名を刻む勇者だ。いつか僕の偉業が―――」
「それに、聖剣ではなくこのわしを頼るとは、選ばれし勇者が聴いて呆れるわ」
節穴の分際でぇー。
「貴方様の腕を見込んでお願いです、バゼルフ様。どうか、世界を救う為に貴方様のその匠の業を貸すのだと、そうお考え下さいませ」
ソアラが必死に説得しようとするが……
と言うか、あんな節穴如きにそこまでペラペラと敬語を吐く必要があるのか?
「お前さん、さぞやモテるんじゃろうな」
何だこいつ?
ソアラが欲しいのか?
そうか、女を理由にして僕に嫉妬しているんだな。
恵まれた僕が羨ましいん―――
「しかしな、わしらドワーフからすれば、お前さんはふくよかさがまるで足りん。鼻もシュッとし過ぎて滑稽に映る。つまり不細工だと言う事よ」
皮肉気に鼻を鳴らす、偏屈極まるバゼルフに、ソアラは言葉と顔色を失った。
……不愉快だ!
貴様の様な毛深い樽体型風情が、僕達の容姿を酷評するな!
「リサ、ソアラ!ねじ伏せてでもこの節穴爺を連行する!」
「解ったわ!」
「良いのでしょうか……」
僕が前に出てリサとソアラが後方から援護をする。
今は傷を付けてでもこの節穴爺を戦闘不能にしなければならない。
国王からの評価が落ちきっている今、なにがなんでも成果をあげなければ。
なんとか頑固な節穴爺にフレイムソードを作らせ、節穴爺を連行しながら急ぎグリジット首都に到着。
そこで待っていたのは本来なら有り得ない事態だった。
「今なんと?」
「ベルディアはサムライに倒されました」
女王の言葉に僕は愕然とする。
まただ、ま
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ