第28話:勇者の計算外その6
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た先を越された。
なんて忌々しい凶悪大量殺人鬼。
恐らくネイが弱らせた後で仕留めたに違いない。
僕の獲物を横取りしやがって。
「セイン殿、ご気分が優れないようですね」
「失礼、少し体調が悪いので」
「そうですか。ここまでご苦労様でした。後日、円卓会議がありますのでご出席お願いいたします」
「…………はい」
謁見の間を退室する。
外で待っていたリサとソアラと合流し、僕は人目も憚らず両膝を屈した。
「僕は、勇者なんだ、正しい存在なんだよ」
「セイン落ち着いて」
「リサ、君は、僕を勇者と認めてくれるかい」
「もちろんよ。貴方は世界を救う勇者よ」
リサが優しく抱擁してくれる。
それだけで僕の荒んだ心は和らいだ気がした。
頭を撫でられ頭の中がぼんやりとする。
そうだ、僕は勇者、歴史に名を刻む勇者だ。
「君を手に入れて正解だったよ」
「ふふ、ありがと。大好きよセイン」
「2人だけで甘い空気を作らないでください! 私もここにいますよ!」
リサのおかげで頭の中がクリアになった気分だ。
実に気分が良い。
考えてみれば勇者に挫折はつきものじゃないか。
これは試練。乗り越えるべき試練なんだ。
この先に僕の望む栄光が待っている。
円卓会議。
ヒューマンを主とする各国の代表者が集まり話し合う場。
古くからこの場にて勇者が紹介され、名前と顔を覚えてもらう。
更に魔王討伐への助力要請も行われる為、非常に重要な会議と位置づけられている。
今回集まったのは主要五カ国の代表。
グリジット。
アルマン。
バルセイユ。
グレイフィールド。
ラストリア。
そうそうたる面々が円卓についている。
僕はバルセイユ王の後方で控え、呼ばれるのを待っていた。
「――ところで最近、サムライなる冒険者に英雄の称号を与えたそうじゃないか。だが、噂には尾ひれがつく、実際どの程度の者達なんだアルマン王」
「くくっ、じつに面白い奴らだ。いちいちこちらの顔色を窺わず、思ったことをそのままに述べる。言っておくが噂の半分は事実だよ」
「ほぉ、貴様が気に入るなど珍しいな。俄然興味が湧いた」
「ならば会ってみるといいラストリア王」
話はあの忌々しい凶悪大量殺人鬼に移る。
僕は聞いているだけでいらついた。
奥歯をかみしめ殺意が溢れるのをなんとか押さえる。
不愉快だ。ヘドが出る。
とんとん。
バルセイユ王がテーブルを指で叩く。
「それよりも勇者の話をしてもらえんかね。この会議はくだらないおしゃべりの為に開催されているのではない。目下の問題、魔王討伐について集まっているのだ」
「ですが、そこの坊やは何一つ活躍しておりませんけど?」
「これからするのだ! 我がバルセイユが誇る、今代の英雄の頂点だぞ!」
王がテーブルを叩く。
女王と王達
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