第46話「〈ゆうなぎ〉」
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「駄目だっ、ゆうなぎの主砲では…っ!」
自身を《大砲屋》と呼ぶ南部が、音を上げた。改金剛型の主砲といえど、射抜くことは出来ない。最も強力な艦首砲を撃てば、の思いがある。だが、このまま回頭すれば、カラクルム級を止めることは不可能に等しかった。悔しさが、彼を支配していた時だ。
「撃ちかた止め!」
「え!?りょ、了解!」
古代の命令に、南部は驚きの色を浮かべて振り返る。
「コース修正、敵艦の下に回り込め!」
艦長帽子の位置を正した古代は、カラクルム級を見据えながら言葉を紡ぐ。
「敵艦下部から押し上げ、軌道を変える。推力全開!」
砲塔が元の位置へと戻ると同時、〈ゆうなぎ〉はカラクルム級から少し離れた。艦橋の窓から地球が見えた。月軌道を超え、地球の大気圏に突入するのも時間の問題だった。必ず、落下軌道を変えてみせる。古代がカラクルム級を睨みつけている中、〈ゆうなぎ〉の艦首がカラクルム級の下部に接触する。激しく、だ。エンジンノズルの噴射光を輝かせ、船体をめり込んでいく。
「落下軌道、変えれません!」
くっと、古代は表情を歪めた。せめて、開発が進んでいない所へ落とすことは出来ないか。最後の手段として、限界的に機関出力を向上させるオーバーブーストの使用命令を下そうとした時、相原が呼びかけてきた。
「古代艦長!司令部の森一尉より秘匿回線で呼び出しが来ています!」
「雪から?」
「繋ぎます!」
古代君、と聞き慣れた呼びかけが届く。何事かと聞き返す暇すら、森雪は与えなかった。イスカンダル航海を共にした彼女は、回線を切り替えるわ、と回線を切り替えた。
「…古代」
通信スピーカーから発せられたのは、イスカンダル航海を共にした男の声だった。この、聞き慣れた声は…。
「真田さん」
男―――真田志郎は、手短に告げる。
「敵艦の軌道データをこちらに送ってくれ」
古代は目を見開いた。手短ではあるものの真田の言わんとしているのは、古代自身が考えていた事でもあるからだ。だが、しかし、こんな短時間で出来るのだろうか。古代は不安になってしまいそうになるのを阻止する為、首を横に振った。今は信じるしかない、真田さんを。
「軌道データ転送、完了しました」
相原から報告を受けた古代は、力強く告げる。
「全艦、逆噴射準備。我々は、”あの艦”に希望を託す!」
誰も、古代の判断に口を挟まない。真田と交わされた僅かなやりとりを、彼らは理解しているからだ。〈ゆうなぎ〉は船体をカラクルム級の下部から引き剥がすと、母なる青い星―――地球の姿があった。その一角には真っ赤な1つの軌跡があり、その正体はカラクルム級だ。既に大気圏に
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