第44話「《プランA》発動」
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い帝国なのだ。無数の墓標と人の手の触れない豊かな自然が、今のイスカンダルの姿だった。
「約束してください。私達のような愚行を繰り返さないと」
沖田は頷き、静かながらも力強く応えた。
「お約束します」
…
……
あの時のスターシャの眼差しを、古代は一生忘れることは出来ない。スターシャは今亡き沖田を通し、人類全体と約束した。彼女が沖田に向けた眼差しには、確かな信頼の光があった。全ての地球人の言葉だった筈だ。
―――古代、現実を見ろ。
真田の言葉が、脳裏を過る。
―――先の戦争で、地球は大きく痛手を蒙った。
イスカンダルへの航海で沖田が波動砲の使用を認めたのも、宇宙戦艦ヤマトを生き残る為だった。言外に告げているのだと、分かっていた。だが、古代は見たのだ。…波動砲によって破壊された惨状を。
ガトランティス艦隊の残骸が漂っている。直撃で蒸発してしまったガトランティス艦も多い筈だ。生き残った艦もあるが、満足に戦闘も航行も出来る状態ではないのは明白だ。
イスカンダルの航海で、沖田は敵艦隊へ向けて波動砲の使用を命じたことは一度も無かった。これ程の威力なのか、と波動砲の引き金を引いていた古代さえ慄然を禁じ得ない。
波動砲は、敵を壊滅させただけではない。標的となった第八浮遊大陸は、最早原型を留めていない。それだけでなく、発射軸線にあったガス状の惑星などは変動が生じ、バランスが崩れ始めていた。
『こちら、地球連邦防衛軍総旗艦〈アンドロメダ〉』
突如として、音声通信が艦橋に響き渡る。同時に、観測班が捉えた映像がモニターに映された。その艦は磯風型・村雨型・金剛型と異なる艦艇で、誰もが初めて見る新鋭戦艦だった。
青みがかった明灰色の船体は、宇宙戦艦ヤマトよりも直線的だ。硬質でどこか無機質な印象を与えているが、武骨さを感じさせていなかった。艦名の由来となったのはギリシャ神話の王女だが、このフォルムは勝利の女神ニケの翼を思わせる優美さがある。
ただ、艦首の2つの穴が、古代には禍々しい砲口に見えた。その2つの穴は、波動砲の発射口だ。先程の蒼き二条の光芒は〈アンドロメダ〉から放たれており、波動砲の発射口は余熱で燻っていた。
『第八浮遊大陸の消失を確認。続いて、本艦は掃討戦に移行する。地球・ガミラス・ブリリアンス連合艦隊は、引き続き静観されたし』
声の主が誰なのか、古代は気づいた。第二次冥王星海戦で金剛型宇宙戦艦〈きりしま〉の艦長を務めた男―――山南修だ。〈きりしま〉で司令官である沖田を支えていた山南の年齢は、50歳を超えたばかりだ。言葉を交わす機会は少なかったが、古代は彼の風貌をよく覚えている。顎髯を伸ばし、顎先だけ残した鬚を常に整え
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