第七百六十三話 餓鬼の姿その九
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「この人はです」
「餓鬼のままか」
「餓鬼道を生きていくのね」
「餓鬼は死ぬとどうなる」
ダンはテンボとジャッキーの話を聞いてからセーラに問うた。
「六道の中にあるから生まれ変わるな」
「そうなります」
セーラはその通りだと答えた。
「その時は」
「そうだな」
「餓鬼で苦しみ」
一万五千年の間そうなりというのだ。
「そしてです」
「その後でだな」
「人か修羅か生きものにです」
「生まれ変わるか」
「遥かにです」
餓鬼よりはというのだ。
「よい生をです」
「過ごせるか」
「そうなります」
そうだというのだ。
「その時は」
「餓鬼の生で償ったか」
「そうなります」
「それならいいがな」
「餓鬼は実に苦しいので」
その生はというのだ。
「一万五千年も苦しめば」
「充分か」
「はい、ですが布施餓鬼を行えば」
「餓えや渇きがましになるか」
「そうなります」
「そうか、しかしな」
「それはですね」
「どうもな」
こう言うのだった。
「俺はな」
「布施餓鬼はされたくないですか」
「全くな」
「そうなのですね」
「そうした奴がなるんだからな」
「悪いものばかり備えたうえでの白痴と言うべき」
「そんなのだとな」
そうした輩が餓鬼になっていると思うと、というのだ。
「とてもな」
「布施餓鬼については」
「しようとはな」
それこそというのだ。
「思わない。勝手にだ」
「餓えて渇いて」
「寄生虫に苦しめられることだ」
「そうなればいいですか」
「その写真の奴に何か長所があるのか」
人としてのとだ、ダンはセーラに問うた。
「一体」
「そう言われますと」
セーラはどうかという顔で答えた。
「私もです」
「見当たらないな」
「普通人は何かしらです」
「長所があるな」
「少しは。ですが」
「そいつにはないな」
「全くです」
それこそというのだ。
「見当たりません」
「そうした奴だな」
「こうした方は珍しいです」
人間としての美点、長所が全く見当たらない様な者はというのだ。セーラはやや戸惑った顔で話した。
「まことに」
「左様ですね」
「ある意味凄いことです」
これまで暫く沈黙を守っていたラメダスとベッキーも言った。
「長所が全くないないなぞ」
「そうしたものが見当たらない人なぞ」
「怠惰、嫉妬、傲慢、大食、憤怒、強欲とです」
「大罪のうち六つを備え」
「好色は強くないにしても」
「怠け者で図々しく尊大で思いやりがなく無神経で自己中心的で粗暴で短気と」
セーラはまた言った。
「悪い部分は非常にありますが」
「いい部分はといいますと」
「見当たりません」
「恐ろしいまでに」
「何も」
「
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