第七百六十三話 餓鬼の姿その五
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「言われません」
「嫌いとも」
「嫌いと面と向かって言う場合は」
「まだましなの」
「嫌いという感情を持っていても」
それでもというのだ。
「嫌いになる部分をなおせとです」
「言ってるのと同じね」
「まだ情があります、もう情もないなら」
「言わないわね」
「どうとでもなれとです」
その様にというのだ。
「思うので」
「言わないのね」
「この人はそうでした」
「周りから徹底的に嫌われて」
「誰もが言わなくなりました」
「どうとでもなれね」
「そう思いましたので」
周りがというのだ。
「そうなりました」
「そうなのね」
「本物の嫌われ者か」
ダンは餓鬼の写真を観つつ考えた、そのうえで言うのだった。
「もう何も言われないか」
「そうなります」
「餓鬼になればな」
「人が批判するのは人です」
「人は餓鬼を批判しないか」
「はい、もう言っても無駄で」
そうであってというのだ。
「どうでもなれとです」
「なるか」
「この人もかつては色々な人に忠告されました」
セーラは今も手に持っているその写真を観て話した、見ればその顔には嫌悪があるが悲しいものもある。
「行いや考えをあらためる様に」
「それでもか」
「変わらなかったのね」
「人の話を聞かず尊大なままだったので」
テンボとジャッキーを話した。
「変わりませんでした」
「そうだったか」
「それで餓鬼になったのね」
「何かな」
「色々考えさせるわね」
「そうですね、自分はこの世で一番偉いと思っていて」
身体も餓鬼になった今もというのだ。
「尊大なままでも」
「反面教師か」
「そうでしかないのね」
二人揃って言った。
「何ていうかね」
「本当に嫌だな」
「あたし達のお手本は名探偵の人達だけれどね」
「ブラック神父とかな」
ブラウン神父のことである、二人は創作上の探偵達を全員実在人物だと思っていて尊敬しているのだ。
「そうだけれどな」
「反面教師はね」
「そうした人だな」
「人としてなりたくないわね」
「そうですね、人にお説教をしても」
そうしてもというのだ。
「それで得られるものはです」
「ないか」
「かえって自分を落とすだけね」
「この場合のお説教はその人をよくする為ではなく」
そうではないというのだ。
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