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金木犀の許嫁
第二十九話 質素な充実その四

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「西郷さんのお家は貧しくて」
「お豆腐も買えなかったんですね」
「だからお豆腐屋さんをおから屋さんって言ってたの」
 そうだったというのだ。
「あの人はね」
「そうでしたか」
「だからね」 
 それでというのだ。
「そこまでね」
「薩摩藩は貧乏でしたか」
「西郷さん達は郷士で」
 武士とはいえ身分が低かったのだ、西郷はそこから島津斉彬に見出されて彼の側近になったのがはじまりだった。
「私達は藩士だったけれど」
「真田家と十勇士のお家は」
「そうだったけれど」
「それでもですか」
「貧しかったことはね」
 真昼は白華に話した。
「間違いなかったわ」
「そうですか」
「それで貯金もね」
「出来なかったですか」
「そうだった筈よ、兎に角ね」
 それこそというのだ。
「貯金出来たら」
「それだけでいいことですね」
「余裕があるのよ」
 その分というのだ。
「まだね」
「そうですか」
「そしてその余裕はね」
 貯金出来るだけのそれはというのだ。
「やっぱりね」
「活かすべきですね」
「無駄遣いしたらね」
「大事な時に困りますね」
「そうなるからね」
 だからだというのだ。
「本当にね」
「まずはですね」
「出来るだけね」
「貯金することですね」
「その時衝動的に買いたいものがあっても」
 それでもというのだ。
「暫くはね」
「考えることですね」
「二週間位置いたら」
 買うことをというのだ。
「あらためてね」
「買いたいかどうかですね」
「考えるのよ」
 そうするというのだ。
「その時にね」
「それいいわね」
 夜空も話を聞いて言った。
「そうしたらね」
「無駄遣いしにくいわね」
「その時買いたいと思ってもね」
 夜空はそれでもと話した。
「後で後悔することもあるわね」
「何でこんなもの買ったのかって」
「そうなる時もあるわね」
「だからね」
 それでというのだ。
「まずはね」
「時間を置くのね」
「それであらためてね」
「買いたいかどうか」
「考えることよ」 
 そうすればいいというのだ。
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