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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第九十四話 下準備 T
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帝国暦487年2月20日12:00
フォルゲン宙域、オルテンベルク星系、銀河帝国、銀河帝国軍、ケスラー艦隊旗艦フォルセティ、
ウルリッヒ・ケスラー

 「複数の商船を臨検しましたが、武器弾薬、禁制品の類いは積んでおらず、積荷の殆どは小麦等の糧食品の類い、そして穀物生産プラントの部品でした」
「所属はどうなっている?」
「はっ、懸念された通りフェザーン船籍ではありますが叛乱軍の民間輸送会社の所属となっております」
「そうか…どの船でもいい、船長をここへ連れて来れるか」
「可能です。ですが尋問の結果も特に不明な点はありませんでしたが…」
「分かっている。直接話を聞いてみたいのだ、参謀長」
「了解致しました」

 ミューゼル閣下の命を受け、シャンタウからここフォルゲンのオルテンベルク星系に移動した。叛乱軍の商船が出没しているという。私の艦隊はシャンタウに居たから、一番近いという事で調査を命じられた。当然ながら訓練も継続しているが、調査の中に臨検も含まれるとなると通常の哨戒行動と変わらない。それにフォルゲンの先はアムリッツァだ。ここフォルゲンにも叛乱軍艦艇は出没するから、哨戒どころか遭遇戦が生起する事も腹案として持っておかねばならない。骨の折れる任務だ…。
 連れて参りました、というブレンターノ参謀長の報告と共に姿を現したのは、背が高く恰幅もいい筋骨隆々とした黒い肌の男だった。民間人とは思えない程、堂々としている。
「名前を教えてくれないか」
そう言うと、男は軽く一礼してデア=デッケンと名乗った。古い姓だが、帝国にもある姓だ。
「デッケンさん、貴方は叛乱軍の輸送会社の所属でありながら、帝国内を航行していましたね。何故ですか」
「…尋問で答えた通りですよ。糧食品の輸送です」
「それはそうかも知れないが、帝国と叛乱軍…失礼、自由惑星同盟は戦争中の間柄だ。民間人で直接戦闘行為に関係が無いとしても看過する事は出来ないのです。航路データによると貴方の船はアムリッツァを出発してオルテンベルクに向かう事になっていた。同盟軍からの依頼によるものですか?」
「いいえ、違います」

 見た目同様、この男は頑なな性格の様だ。独航の商船の船長ともなると自然に肝が据わるのだろうが、叛乱軍からの依頼ではなく叛乱軍そのものなのかもしれない。尋問で判明した事実をまとめた書類をめくってみると…これは…。
「デッケンさん、貴方の出身はクラインゲルトなのですか?」
「そうですが、何か」
クラインゲルト…フィーアは元気だろうか。叛乱軍のアムリッツァ占領の時も逃げ出す暇はなかった筈だ。そもそも辺境過ぎて定期便すらまばらだった。
「奇遇ですね、私もクラインゲルト出身なのですよ。今のクラインゲルトはどうなっていますか?」
男の表情が僅かに動いた。同郷と知って驚
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