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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第九十四話 下準備 T
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の捕虜交換は帝国…ラインハルトから同盟に持ちかけられた。内戦状態に入った帝国に対して、同盟に余計な手出しをさせない為だった。自分で問題提起しておいてアレだけど、今帝国が同盟に工作員を潜入させるメリットはあるのだろうか?原作のあの時期、同盟は揺れていた。アムリッツァでの大敗のあとで、国防体制の再構築もままならず、政治不信も加速していた。結果ラインハルトから策を授かったリンチの暗躍でグリーンヒルがクーデターを起こした…本人を目の前して言うのもアレだけどね…。

 今の同盟はそれほど追い詰められてはいない。心理的に追い詰められいる、と思うのは帝国だろう。先日の戦いで此方に一矢報いたものの、アムリッツァもイゼルローンも取り戻してはいないのだ。しかもラインハルトを宇宙艦隊副司令長官に抜擢して、同盟に対する盾として使おうとしている。三バカ提督が言った通りミュッケンベルガーはすぐには前線には出てこない。時期的に考えると皇帝の体調やらを気にしての事だろう。ラインハルトとしては願ったり叶ったりだろうが、麾下の兵力が少ないから、能動的に此方に何か仕掛けるという訳にもいかない筈だ。となると、もし工作員を潜入させるとなると同盟そのものではなく同盟軍に対する工作になる可能性が高いな…。
「此方からも工作員を送り込んではどうだろうか?」
本部長が思いつきを口にした。
「いいお考えだとは思いますが、難しいでしょう」
「何故かね?」
「帝国が階級社会だからです。身分擬装が難しい。権力中枢に潜り込めるある程度の身分と、帝国の現体制を覆そうという信念と気概のある者でないと厳しいでしょう。平民階級であれば擬装は簡単ですが、工作員としての行動範囲が限定されてしまいます。それに…」
「それに?」
「事が露見した場合、帝国の同盟に対する態度は硬化するでしょう。帝国政府はどうでもいいが、平民階級へのマイナスイメージは避けたいのです。彼等は帝国に対する潜在的な反乱階級ですからね」
「なるほどな…君の言う通り、あくまでも誠実に事に望んだ方がいいだろうな。事務局長の件は了解した。欲しい人材や必要な物があれば言ってくれ。トリューニヒト委員長にも話をしておくから、辞令はすぐに下りるだろう。ビュコック長官には君からも話をしておいてくれ」
「了解いたしました」

 





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