激闘編
第九十四話 下準備 T
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
る一方で辺境の援助…何かある筈だ…。
「まあよい。辺境の件はひとまず置いて、捕虜交換について話し合うとしようではないか。まず軍務尚書、卿はどう思われる」
「私は反対ですな。捕虜と申しましても、軍では戦死者として扱っております。仮に、此方にいる叛乱軍の捕虜と同程度の人数が戻って来るとすれば、その者達をどう扱うのか…単純に軍に復帰させる訳にも参りません、中には共和主義に逆洗脳された者も一定数は存在する筈です、混乱を招きますぞ」
「ふむ。統帥本部長はどうか」
「半ば賛成、半ば反対ですな。軍務尚書の仰る通り共和主義に毒された者も居るでしょう。ですが節を曲げずに帝国への忠節を守り通した者も居る筈…叛乱軍の目的が奈辺にあるか、交渉の中でそれを明らかにするのが先決でしょう」
「そうか。司令長官はどうかな」
「私は賛成です。彼等は叛乱軍の虜囚となりながらも捕虜の地位に甘んじて来た。帝国の為に戦い、力尽きてやむを得ず囚われたのです。それを我々が拒否するとなれば、むしろ彼等を叛乱軍に追いやる結果となりましょう。軍務尚書の言う様に共和主義にかぶれた者も存在するでしょうが、それは杞憂に過ぎない。そういう者達に対しては帰国させた上で改めて対処すればよい」
三者三様…リヒテンラーデ侯はどう決心するのだろう。俺は賛成だ。ミュッケンベルガーの意見が一番近い。帝国の為に戦い抜いた者を厚く遇せずして、今戦っている兵達に戦いの意義をどう問うのか。捕虜の帰還を認めないとなれば、兵士の命は使い捨てと公言する様なものだ。そんな国家に誰が忠誠を誓うというのか…国内で新たな不穏分子を育てる結果になるだろう。
「ミューゼル大将はどうかな」
思わず背筋が伸びる。本来俺はこの場には呼ばれてはいない、答えてもいいのだろうか。思わずミュッケンベルガーに目をやった。
「構わん、卿の思うところを述べよ」
「はっ……小官は賛成であります。皇帝陛下の御為、帝国の為に戦った者達の帰還を認めない…これでは兵士達は安心して戦えません。更には何の為に戦うのかと兵士達に疑心を抱かせる結果となりましょう。生還を褒め称え、厚く遇するべきではないかと思う所存であります」
「ふむ…ミュッケンベルガー元帥も卿も、流石は直に兵を率いて戦う者の意見よの」
「ありがとうございます。ただ、注意すべき点もございます。叛乱軍が帰還兵の中に工作員を紛れ込ませるかもしれません。捕虜交換の実行時には所要の事務手続もございますれば、その際身元確認には細心の注意を払うべきかと存じます」
「成程、工作員か…此方がその手を使ってもよいかもしれぬな。皆ご苦労であった、軍の皆は散会して構わん」
移動の地上車に乗り込むと、ミュッケンベルガーは大きな息を吐いた。
「工作員か…卿の言う通り、考えられない事ではない。卿自身はどれくらいの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ