激闘編
第九十四話 下準備 T
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居るのか。叛乱軍はどうか分からないが、公式には帝国軍人の捕虜は存在しない事になっている。宇宙空間の戦闘での行方不明者は戦死扱いになるし、帝国の国是として叛乱軍…政治犯に降伏するなど許されないからだ。消息が伝わって来たとしても、余程の高位の者でないと残された家族に伝えられる事はなかった。それに、捕虜交換と言ってもただ交換するだけでは終わらない。捕虜になった経緯…降伏したのか、負傷等でやむを得ず囚われの身になったのか…帰国後の彼等の処遇に関わる膨大な事務作業が発生するのだ。
「この休憩が終わり次第リヒテンラーデ侯の許へ向かう。卿も同行せよ」
「はっ」
新無憂宮の北苑にある国務尚書執務室に通されると、そこには既に軍務尚書エーレンベルク元帥、統帥本部長シュタインホフ元帥が到着していた。
「副司令長官が来るとは聞いていないが」
「私が同行を許可した。叛乱軍への対処は副司令長官に一任してある、後から話すより手間が省けるのでな。宜しいか、軍務尚書」
エーレンベルクはフンと鼻を鳴らしただけで、ミュッケンベルガーの言葉に応える事はなかった。やりとりを見ているエーレンベルクも肩をすくめただけだ…どうやらこの二人からはまだ信用されていない様だ…部屋の主であるリヒテンラーデ侯が一つ咳をした後、口を開く。
「卿等を呼んだのは他でもない、捕虜交換の件だ。前例の無い事なのでな、専門家たる卿等の意見を聞こうと思ったのだ」
部屋の中には我々の他にもワイツ補佐官、ゲルラッハ財務尚書が同席している。二人はリヒテンラーデ侯の腹臣だ。
「その件につきまして、ご報告がございます」
「何かな、ミュッケンベルガー元帥」
ミュッケンベルガーが俺に目を向けた…俺に報告しろという事か…。
「初めて御意を得ます。宇宙艦隊副司令長官、ミューゼル大将であります。おそれながら、辺境にて由々しき事態が発生しております」
「由々しき事態とか」
「はい。自由惑星同盟を僭称する叛徒共が、我が帝国の辺境の在地領主の方々に物資援助を行っております」
部屋の中が静まりかえる。内心皆驚いているのだろうが、それを表に出す者は居ない。
「辺境に叛乱軍が援助…辺境の貴族を罰するも下策、放置も下策…嫌らしい手をうってきたものよの」
リヒテンラーデ侯はそう言って薄く笑った。報告を聞いて瞬時に判断した…流石は帝国の国務尚書と言うべきだろうが、無策ではいられないのも事実だ。
「侯、笑っている場合ではありますまい。捕虜交換を持ちかけておきながら一方では帝国領土を蚕食する…彼奴等の好き勝手にさせておく訳にはいきませんぞ」
「では何か策がお有りかな、軍務尚書」
「それは…」
逆に問いかけられてエーレンベルクが言い澱む…ふん、こういう時は黙っておくのが一番なのだがな…捕虜交換を持ちかけ
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