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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第九十四話 下準備 T
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めて、全容の把握に努めたいと思います」

”宜しく頼む。だが無理はするな、アムリッツァはすぐそこだ“

「心得ております」



2月21日10:00
ヴァルハラ星系、オーディン、ミュッケンベルガー元帥府、宇宙艦隊司令長官公室、
ラインハルト・フォン・ミューゼル

 「叛乱軍は黙認しているというが、黙認ではなく奴等の軍事行動の一環だろうな」
ミュッケンベルガーの顔は険しい。確かに険しくならざるを得ない。叛乱軍は謀略によって辺境を引き寄せようとしている…。
「辺境を援助…叛乱軍としては当然取り得る選択だと考えます」
「同盟に降った罪滅ぼしとは…芸が細かいな」
「心情的にはそうだと思います。確かに辺境は貧しいですから」
「それで叛乱軍も黙認か…言い訳としては成り立つな。放置は出来ん。だが…」
ミュッケンベルガーはその先を口にしなかった。結果が容易に想像出来るからだ。叛乱軍と通じたと辺境の貴族を処罰すれば、本当に辺境は叛乱軍に通じてしまうだろう。別の事態も想像出来る。仮に辺境の貴族を処罰を行ったとする。辺境の領地を治める者が居なくなるのだ、大貴族達が我先にと実力で奪うかもしれなかった。結果、辺境の混乱が帝国中枢にまで波及し、皇位継承問題とは別に力を伴う宮廷闘争が始まる事になる…嫌らしい手だった。時間はかかる、だが確実に帝国にダメージを与える事が出来るのだ。
「叛乱軍が実際に援助を行う範囲や規模はそれほど大きくないと思われますが、いずれは辺境全体に叛乱軍の援助の話が伝わるでしょう。そうなればドミノ倒しの様に我先に援助にありつこうとする辺境の在地領主が現れるかもしれません」
「…そうなると帝国中枢の大貴族にも話が伝わるのは時間の問題だな」
「はい…事は軍が処理する範囲を越えていると思いますが」
帝国の統治の根幹を揺るがす問題だった。帝国は、戦争にかまけて辺境を放置してきたツケを払わされようとしているのだ…。

 ミュッケンベルガーは従卒を呼び入れると、コーヒーを用意させた。従卒が出ていくと小さなため息を吐いて再び口を開いた。
「もう一つ問題がある」
「問題、ですか」
「基本的にはいい話なのだがな、卿からのこの報告を聞いた後では問題と言わざるを得ん。叛乱軍がフェザーンを通じて捕虜交換を打診してきた」
捕虜交換だと?目的は何だ?謀略を仕掛ける一方で捕虜交換の打診…これも謀略の一環なのか?
「捕虜交換に際して、叛乱軍は何か条件をつけたりはしていないのですか」
「いや、単純に捕虜の交換のみだ。上層部はそれで真意を図りかねている」
叛乱軍との捕虜交換など、知り得る限りでは聞いた事が無い。
「捕虜はどれ程存在するのでしょう?」
「此方には二百万人程ではなかったかな。あちら側も似た様な数字の筈だ」
二百万…そんなに
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