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Re:命が軽い魔法の世界でワイらは生きる
魔法少女育成計画thread people
【おいおいおい】魔法の世界では常識に囚われてはいけないのですね!【アイツ消えたわ】
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今すぐこの場から逃げ出すべく動かない体に鞭を打つように身を捩り、恐怖から少しでも逃れるべく腹の底から叫んだ。――はずだった。
 捩ったはずの光の体は何も変わらず、未だに半身が冷たい。出したはずの声も響いた様子がなく、喉から絞り出したような掠れた声しか出なかった。

「ははは。無駄だよ無駄。そんな死に体な体で動けるわけないじゃん」

 おぞましい少女の声が頭上から投げられる。
 不意に目蓋を撫でられた感覚があり、視界が開けた。光が自ら開いたわけではない。外から無理やりこじ開けられたのだ。

 少女が光の目の前で屈んでいた。
 白衣を着て、大きめの眼鏡をかけた少女だ。部屋が暗くて見辛いが、白衣の下には黒いマイクロビキニも着ている。
 少女が着るにはあまりにもちぐはぐとしているが、そんなものは問題ではない。少女の顔は、まるで子供が新しい玩具でも見つけたかのように輝いて見えたが、同時に親の敵でも見つけたかのように憎悪を含んだ瞳で光を見ていた。
 光は少女を知っている。キークだ。歪んだ魔法少女愛で、魔法少女を選別する、正真正銘の人格破綻者で、これから光の命を脅かす魔法少女だ。
 どうするればいいか。魔法を使うか。部屋は薄暗く明かりが見当たらない。
暴力に訴えるか。今まで暴力とは無縁だった光に何ができるか。それに体も未だ動かせない。
 説得か――明らかに立場が下な光がこんな奴相手に無理に決まっている。
 考えても何も良い策が思い浮かばない。これではまるで、さっきの続きだ。崖っぷちに立たされ、そこから逃れようとしても、結局は光には何も出来ずに事態が最悪の方向へと向かって終わる。
 今もそうだ。また崖っぷちに立たされ、何も出来ずにここで終わる。




 つまりは、■ぬのだ。




「――キーク……さん」
「おっ、喋った。結構強めに電撃浴びせたと思ったけど、もう少し強くても良かったかな?」

 気づいた時には既に光は口にしていた。
 何も考えていない。下手なことを喋れば、その場で殺されるかもしれないのに、光は少女の名前を呼んだ。
 恐怖で頭がおかしくなりそうだ。いや、おかしくなったから、光は考えを放棄して、自らの感情に素直になったのだ。

「……お、願い、します。……殺さないで、ください……」

 地面に頭を擦り付ける事が出来れば、すぐにそうするだろう。もはや光の思考は、自身が生き残る事に全てを回していた。
 後先を考えず、ただ生きたいという生物の本能に直結した安易な考えだ。たが、もうそんな事を考えている余裕はない。
 今を生きれば、今を生きればいいのだ。生きていればいい。死ぬよりマシだ。そんな考えの元で、光はキークに懇願した。



――死にたくない










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