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Re:命が軽い魔法の世界でワイらは生きる
魔法少女育成計画thread people
【おいおいおい】魔法の世界では常識に囚われてはいけないのですね!【アイツ消えたわ】
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彼女を見捨てるほど翔は人でなしではない。
 ならどうすべきか、と考えていると、またファンの機械音声が聞こえてきた。





624:ファン
……大体は調べ終わったポン
けど、これはかなり厄介ポンよ


625:12
どういうことだ?





「どういうことだ?」
「…中身がない、って言えばいいポンかな」
「……? 中身がない?」
「そうポン。中身がないんだポン」

 ジルとファンの声が掲示板の言葉と重なる。
 ただの機械音声であるはずのファンの声が、少し重苦しく感じるのは気のせいだろうか。それを聞いたジルの表情にも余裕がない。

「……今、原作読了済みの体には中身、意識自体がないポン。ただ気絶してるとか眠らされてるとかと違って、これは原作読了済みの精神を根本から引っこ抜いてるから、病気とかを治す魔法なんか効かないポン」

 中身がない。意識自体がない。精神が引っこ抜かれた。
 正直、それらの言葉を聞いても翔にはピンとしたものが感じられなかった。
 ただ、この世界に来てまだ日が浅い翔にも、このままでは原作読了済みが助からず、一生眠りにつくというのだけは分かった。

「……ともかく、今は原作読了済みを助けるのは無理ポン。この問題は一旦、保留するのをファンは提案するポン」
「…………」

 重い沈黙が魔法少女たちの間で流れる。
 互いに顔を見合わせては、魔法少女の可憐な眉間にしわが寄っていたり、魔法少女の愛らしい唇が震えていたり、それぞれ違った表情を見せていた。恐らく、翔も酷いをしているだろう。

 このおかしな世界に飛ばされて、右往左往していた翔たちにとって、唯一の希望は、いとも簡単に失われていった。
 原作読了済みは、未だ目覚めなかった。






◇ノルカ・ソール――[原作読了済み]三浦 光

「――うっ……!」

 始めに感じたのは、電撃が走ったかのような体の痛みだった。
 体が跳ね、目頭が熱くなる。暗かった目の前が一瞬にして白くなり、それから徐々にまた暗くなる。
 口の端から涎と呻き声が飛び出して、そうしてから光は意識を取り戻した。

――……ここは、いったい……

 体に力が入らない。床に寝かされているのか、ひんやりと冷たい感触を体の半身から感じる。
 頭がボーッとする。自分は今まで何をしていたのか。思考が上手くいかない。考えが上手纏まらない。

「やっと起きたか。この偽物」

 声が聞こえた瞬間、全身の毛が逆立つ。
 同じだ。あの時聞いた声と同じだ。語気が荒くも凛とした少女の声、それは頭に直接響くような声ではなく、まるですぐ近くで喋っているかのような――

「……ぁ」

 不完全だった意識が一気に覚醒する。
 
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