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邪教、引き継ぎます
第四章
38.仮面
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いたいのか理解した。

「いえいえ、そんな。サマルトリアの王子にいろいろ言われていたと思いますが、気になさらなくて大丈夫だと思――」
「いや、結果がすべてだ」
「……」

 慰めの言葉を必死に探すフォル。
 他の面々は、それを察した。

「オレの親もロトの子孫と戦って死んでるしな。因縁がある奴はお前だけじゃないぞ。気負いすぎると身が持たないだろ」
「そうそう。今の教団はロトの子孫被害者の会みたいなもんだし」

 バーサーカーの少女に同調しながら、「おれは何も被害を受けてないけどね」とタクトはおどける。

「だな。だいたい、誰が戦っても同じ結果だろ、サマルトリアの王子は。あれはもう人間じゃねえよ」
「……人間が到達できる限界は超えてるだろうね」

 若きアークデーモンの族長の意見に、ミグアもボソッとつぶやくように補足を入れた。

 祈祷師ケイラスは小さくうなずき、手に持っていた仮面を着け直した。
 顔が見えなくなる直前、わずかに微笑を浮かべたように見えた。

 安心したフォルが、そういえば、と自分の仮面を探す。足下すぐのところに落ちていた。
 それを拾おうと、しゃがみ込もうとしたときだった。

「一つ、君に意見をしてもよいか」
「え? あっ、はい。それはもちろん! 何でもおっしゃってください」

 慌てて姿勢を正すフォルに、仮面姿のケイラスは言った。

「君はもう、仮面を着けるな」

「えっ、なぜです?」
「ハーゴン様がそうだったからだ」

 金髪の祈祷師は、その一言しか理由を述べなかった。

「あの、その、それは、えーっと」

 どう答えてよいかわからず、しどろもどろになる。

「わたしは賛成。キミは素顔のほうがいい」
「おれも賛成かなー。そのほうがイケてるよ」
「オレも賛成だ。紛らわしくなくていい」
「俺も。たぶん俺だけじゃなくアークデーモンはみんな賛成……つーか誰も反対はしねえだろ」

 全員の後押しがあってもなお頬や髪を()くフォルだったが、やがてそれはとまった。
 手元の杖の宝玉を見て、そして洞の天井を見上げ、それから答えた。

「わかりました。僭越(せんえつ)ではありますが、以後そのようにいたします」
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