第四章
37.失われた呪文
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てもらえるなら頑張ります! それは前にお伝えしたとおりです! あなたがたはそれも潰そうとするんですか!」
「うん。残念だけど、そうだよ。それが今の僕たちの立場だから」
「……っ!」
「フォル君! 杖!」
タクトが悪魔神官の杖を拾い、フォルに投げた。
「ありがとうございますっ」
それを両手でキャッチすると、フォルは杖の頭を緑の魔法戦士に向けた。
「ハゼリオ様、ハーゴン様! 私に力を!」
祈りをこめたその杖からは、風が巻き起こるはずだった。
しかし今回はそうではなかった。
「ん?」
起きない風。違和感を覚えるサマルトリアの王子。
代わりに、地鳴りにも似たような音がして、それが急速に近づいてきていた。
ここが洞内でなければ、王子もその時点で気づいたのかもしれない。あまりにもこの場では考えにくいことで、彼も察することができなかった。
「うああっ!!」
大きな雷鳴とともに、まばゆい雷光が、洞の天井から三筋。
緑の魔法戦士に直撃した。
洞窟内で起こりうるはずのない現象。その激しい音とまぶしい光に、フォルやタクトも五感を一瞬奪われた。
静寂ののち、視力が戻ったフォルとタクトは、倒れているサマルトリアの王子を視認した。
「おお、やった」
安心したように剣や盾を下ろすタクト。
一方フォルは、肩を激しく上下させながら杖を構えたままだった。もちろん視線も、倒れた彼に固定されている。
フォルのほうの予想が当たった。
ダメージはありそうだが、彼は起きあがってきた。
「悪魔神官の……杖の……力か……。引き出せるように……なってきてるんだね……」
「げえっ! まだ終わってなかった!」
慌てて剣と盾を構え直すタクト。
「……僕も、今回の好機に賭けてるからね。ここで僕が勝てば、あいつらは……ロスや、アイリンは、もう戦わなくてすむから」
「きみ、執念深すぎて怖いよ!? さっさと退場してよ」
「これくらい執念深くないと、僕たちの勝利はない。そう思ってる」
サマルトリアの王子はふたたび隼の剣を構えた。
剣に炎は纏わない。
「証拠を、今見せるよ」
剣先を二人のほうへと向け、詠唱した。
「ザラキ」
フォルとタクトが同時に胸を押さえた。
「ぐっ、ぁっ、これって、血が固まって、死ぬやつ、じゃ…………あれ? 死なない」
苦しそうにあえいだだけで、二人とも倒れることすらなかった。
やはり、とサマルトリアの王子は言った。
「うん、死なないんだ……死なないんだよ。この手の攻撃では今の君たちを死なせることはできない。ここで僕が自己犠牲呪文を使ったとしても、僕だけが死んで君たちは生き残
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