第四章
37.失われた呪文
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、かな」
その言葉に、途端に慌てだしたのはタクトである。
「嘘じゃないよ!?」
「いや、嘘だと思う。少なくとも『実は最強』とか、そんなところはね」
「おれが言ったことは本当だよ! 天地神明に誓ってホントだよ! おれ、めっちゃ強敵だよ! 逃げないと損するよ!」
緑の魔法戦士は、静かに言った。
「こう見えても、僕はいろんな人を見てきたつもりだよ。君の雰囲気は、とても戦う人間のものじゃないね」
逃げる必要どころか、警戒する必要すらない。
そう言わんばかりに肩の力を抜いたまま、剣先をタクトに向けなおした。
「きっとベギラマ一撃で戦闘不能、いや、それどころか、まともに当たれば即死するんじゃないかな」
「いや? カーンって跳ね返して、そっちがやられることになると思うよ!?」
また沈黙の時間が流れる。
だが今度は、先ほどよりも早くそれが解けた。
「それも嘘かな。まあ、やってみてから考えるよ」
隼の剣が炎を纏い始める。
タクトの顔から吹き出していた汗の量がさらに増し、顎から落ちた。
しかし。
「えっ!? あっ」
声とともに顔を歪めたサマルトリアの王子。
その右腕、イオナズンで焼けたと思われる服の裂け目に、一人の人間が噛みついたのであった。
「フォル君!」
タクトの声。
それは、意識を失っていたはずのフォルだった。
ベギラマの直撃で仮面は落ちてしまっており、杖もどこかに行ってしまっていた。ただただ必死の形相の少年が、ロトの子孫に噛みついていた。
炎が消えた。
そして二人はまた揉み合いながら床に倒れる。
「っ!」
すぐに落ち着きを取り戻したサマルトリアの王子が、立ち上がりながらフォルを振りほどいた。
決して怪力ではないとされていた王子だが、力の入れ方は絶妙だった。大きく振り飛ばされたフォルが床を転がり、岩にぶつかって止まった。
「生まれて初めてだ、人間に噛まれたのは……」
フォルは顔を苦痛でゆがめながら立ち上がると、口から血を吐き捨てた。
「私も、何でもします。同志が生き残るためなら!」
「いいと思うよ。あと、今のはちょっとゾクっとした」
血がしたたり落ちる右腕を見ながら、サマルトリアの王子は微笑を浮かべる。
フォルはなおも彼を睨みつけた。
「ハーゴン様の教団はあなたがたに潰されました。ハーゴン様も、ハゼリオ様も、ベリアル様も、幹部はみんな殺されました。理由は納得しているつもりです。でも、残された同志たちはこれからもこの世界で生きていかなければなりません。私たちロンダルキアが求めるのは、同志が同志として生きていけるようにしたい、それだけです! それ以上は望みません! 補償だってさせ
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