第九十三話 本音と建前
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コールではありません。この遠征の戦略上の目的が何処にあるのかを伺いたいのですが」
俺の発言に対して最高評議会議長サンフォードが深く頷きながらムーアに目配せした。議長の意を組んだムーアが口を開く。
「副司令長官の仰る通り、我が同盟はアムリッツァを確保しました、それによって国内は建国以来の熱気に満ち溢れております。ここで更に大戦略を推し進め帝国中枢に近付く…さすれば帝国辺境は枯れ落ちる事は必定、それは帝国の国家経営に大打撃を与えるばかりか、帝国の心胆を寒からしめる事が出来るでしょう」
それがムーアの答えだった。理は叶っている。そう、理は叶っているんだ、理にはな…。
「作戦案を見せて貰いました。ヴィーレンシュタインまで進出するという事ですが、帝国軍も迎撃に出てくるでしょう。ヴィーレンシュタインを抜ければシャンタウです、帝国中枢に近い。当然帝国軍の迎撃体勢も大規模なものになると思いますが、それについてはどうお考えですか」
「それは高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する事になります」
フォークよう、真似されてるぞ…似たようなシチュエーションで同じ名台詞を聞けるなんて…だけど実際に聞くと本当に呆れてしまう…。
「要するに行き当たりばったりと言う事ではないかな」
同様に呆れたのだろう、ホアン・ルイが肩をすくめて失笑した。トリューニヒトやレベロは腕を組んでしかめ面だ。軍事の専門家ではないホアンですらそういう感想なのだ。一応ムーア達は職業軍人の将官でプロの筈なのだが、素人にすら呆れられてしまう作戦というのはどういう事なのだろう…作戦案を何度見ても、大まかな事しか述べられていない。小学生レベルの作文みたいだ。細部に関しては軍部で詰めるとでも考えているんだろうが、そもそも軍部の方針はアムリッツァ長期持久なのだ。ムーア達はそれを認識しているのだろうか?方針に反する出兵案をトリューニヒトや本部長が諸手を挙げて歓迎すると思っていたのだろうか?
「そもそも軍部の基本方針はアムリッツァの線での長期持久ですが、帝国領内に侵攻する時期を現時点にさだめた理由をお聞きしたい」
ムーアはどう答えるのだろう、まさか政権支持率の為とか武勲が欲しいからとは言わないだろうが…流石に言いづらい様だ、言い澱むムーアにホーランドが助け船を出した。
「戦いには機と言うものがあります。その戦機を逸しては運命の神の寵愛を得る事は出来ません。後から悔いる…小官は後悔という言葉の見事な実例を示したくはありません」
そう言い放ったホーランドの顔は紅潮している…まったく説明になってない。自分の願望を述べただけじゃないか…。
「ホーランド提督、つまり現在こそが帝国に対して攻勢に出る機会だと貴官は言いたいのですか?」
「その通りです。聞く所によりますと現在の帝国軍が辺境防衛にまわせる
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