第九十三話 本音と建前
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帝国暦487年2月6日13:15
ヴァルハラ星系、オーディン、銀河帝国、銀河帝国軍、ミュッケンベルガー元帥府、宇宙艦隊司令部、
宇宙艦隊副司令長官公室、
イザーク・フェルナンド・フォン・トゥルナイゼン
「大佐はどう思いますか」
「参謀長のお考えが宜しいかと」
「そうですか。フェルデベルト中佐は如何です?」
「小官も同様です」
キルヒアイス参謀長が深く頷く。参謀長を含め我々参謀が今取り組んでいるのは、叛乱軍の迎撃体勢についてだった。明確に示された訳ではないが、攻め寄せる叛乱軍に対してはミューゼル副司令長官の艦隊を含む五個艦隊が初動対処する事になっていた。ミュッケンベルガー元帥麾下の十個艦隊は帝国国内の緒情勢へ対処が求められている。
「参謀長、率直な疑問なのですが」
フェルデベルト中佐が口を開く。
「何でしょう、中佐」
「元帥閣下の副司令長官に対する信頼の現れだとは理解しているのですが…対叛乱軍用の戦力が五個艦隊では心許なくありませんか。もう二個艦隊ほど回していただければ、我々もこれ程頭を悩ませる事もないのですが」
「そうですね…ですが、対外兵力をこれ以上増強出来ないくらいに国内情勢は悪化している、と元帥閣下はお考えの様です。ミューゼル閣下もそれは理解しておれられます」
「それほどまでに国内情勢は悪いのですか」
俺もフェルデベルト同様にそう思う。
「悪い、というより今後の悪化が避けられないと元帥閣下はお考えの様です」
「それは何故ですか」
「…畏れ多い事ですが、皇帝陛下の体調が原因です。陛下は御世継ぎを示しておられません。もし陛下がお亡くなりになられた場合、帝位を巡って帝国国内にて内乱、またはそれに類する騒擾が生起する恐れがあります。その場合、軍はそれを鎮圧せねばなりません」
「…元帥閣下の率いる艦隊司令官達が、元帥閣下の子飼いの方達が多いのはその為ですか」
「はい。同じ理由でミューゼル閣下の率いる艦隊司令官達も、ミューゼル閣下と親しい方達で固めています。叛乱軍と対峙している時に裏切られては叶いませんからね」
フェルデベルトは何度も頷いていた。おそらくそうだろうと思ってはいたが、ここまで露骨に戦力を分けるとはな…ミュッケンベルガー元帥やミューゼル副司令長官に近い人間であれば意図を理解出来るだろうが、外野はどう見るだろうか。ここまであからさまな人事では、元帥と副司令長官の仲が悪いと考える輩も少なからず存在するだろう。それに理由も理由だ、皇帝陛下の寿命を理由に兵力配置を行うなど、不敬罪ととられてもおかしくはない行為だ。まあ、であるからこそ明確な命令が出されないのだろうが…。
「トゥルナイゼン大佐は如何です?疑問はありませんか?率直な疑問ほど事態の本質に直結している事が多いものです。あるのならば遠慮せずにど
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