暁 〜小説投稿サイト〜
バックベアード
第四章

[8]前話 [2]次話
「別に妖怪でもね」
「驚かないわよ」
「そういえば最初から落ち着いているな」
 妖怪は部屋の中から応えた。
「言われてみれば」
「ええ、妖怪でもね」
「驚かないわ」
「そうだな、まあ別にな」
 妖怪はそれでもと返した。
「落ち着いているならいい」
「そうなのね」
「あんたとしても」
「うむ、しかしな」
 それでもとだ、妖怪は二人にこうも言った、
「日本は確かにいい国だ」
「暮らしやすいと聞いて来てみたら」
「そうなのね」
「わしは元々ニューヨークにいた」
 アメリカのこの街にというのだ。
「あの街もいいが大阪もいいと聞いてな」
「移住してみたのね」
「そう聞いて」
「すると実際にいい街でな」 
 明るい声で言ってきた。
「ずっといたい、こちらの顔役とも親しいしな」
「大阪の妖怪の」
「顔役っているのね」
「ここのすぐ近くのな」
 妖怪は二人にすぐに話した。
「安倍晴明神社におられるぞ」
「ああ、あそこになの」
「同じ阿倍野区の」
「そうだ、あそこの九尾の狐殿がな」 
 この妖怪がというのだ。
「大阪の妖怪のまとめ役なのだ」
「そうだったのね」
「あそこにそんな妖怪さんいたのね」
「そういえば安倍晴明さんって狐に縁あったわね」
「お母さんが狐だったそうだし」
「そうした話があってな」
 それでというのだ。
「あちらは狐の社でな」
「それでなのね」
「あちらに大阪の妖怪さんのまとめ役がいるのね」
「その狐殿とも懇意になって」
 そうしてというのだ。
「楽しく暮らしておる」
「この大阪で」
「そうなのね」
「いい街だ」
 満足している言葉だった。
「大阪はな」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
「私達にしてもね」
「大阪生まれの大阪育ちだし」
「それじゃあね」
「そうだな、しかしな」
 妖怪はこうも言った。
「一つ気になることがある」
「っていうと?」
「何が気になるの?」
「大阪の夏は暑いな」
 少し苦笑いになっての言葉だった。
「どうも」
「それはね」
 杏奈は妖怪の今の言葉に否定せずに答えた。
「確かにね」
「これが大阪の夏なのよね」
 美嘉も言った。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ