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幻想のバンパイア
第二章
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 ある日だ、彼は史跡研修で行った日本のある街で日課の神への祈りを行おうと入ったカトリックの教会でだった。
 ある美女を見てだ、こう言った。
「貴女は」
「何か」
「まさか」
 雪よりも白い青ざめたと言ってもいい肌に血の気のない唇を見てわかった、それは生きているものではなかった。
 青い湖の様な目に整った顔立ちに豊かな波立った腰までの金髪は非常に美しい、見事な身体つきで背は一六〇程で白いくるぶしまでのドレスで身を包んでいる、その彼女を見て彼は瞬時にわかったのだった。
「日本におられるとは」
「おわかりなのですね」
「死霊、いえ夜叉ですね」
「あの本ではそう書かれていますね」
「本当におられるとは」
「この通り。あの作品はです」  
 女性はおずおずとした態度で答えた。
「実はです」
「本当のことを書いていたのですね」
「はい、そして」
「貴女はあの様にして」
「彼と共にいました、そして」
「今はですね」
「彼は私の糧となってくれたので」 
 そうであるからだというのだ。
「今はです」
「同じにですね」
「なりました、そして」
 そのうえでというのだ。
「今はです」
「共にですね」
「います」
 そうしているというのだ。
「この教会で」
「日本にですね」
「そうです、ですから」
 それ故にというのだ。
「今は幸せを感じています」
「そうなのですね」
「あの、私のことをご存知なら」
「何もしません」
 オリゴは確かな声で答えた。
「ご安心を」
「そうですか」
「こう言っては何ですが」
「私の様な者に」
「末永くです」
 その様にというのだ。
「最後の審判の後も」
「幸せにですか」
「なって下さい、貴女は私が知っている吸血鬼と違います」
 このことを本人に告げた。
「人の心を持っています、ですから」
「吸血鬼でもですね」
「幸せになって下さい」
「必ず」
 女性は深々と頭を下げて約束した、そしてだった。
 静かに礼拝堂の前を後にした、オリゴはその礼拝堂において跪き神に祈りを捧げた、その後で女性が礼拝堂を前にしても何もなかったことに気付いた。吸血鬼ならば十字架もこうした場所も忌み嫌うというのにだ。
 彼はこのことに一人頷きつつ教会を後にした、そうしてだった。
 このことは誰にも話さなかった、だが吸血鬼の中には人間の心を持つ優しい吸血鬼もいると話す様になった。それはどうしてか誰もわからなかった。だが本人だけはわかっていて言い続けた。そのうえで彼女の幸せを祈り続けた。
 彼がそうなったことは友人のシュバルツブルグもどうしてか知らなかった、だがこう言った。
「何につけても死霊の恋は認めたのかな」
「そうなったよ、あの作品は真実の一面を語っているよ」
「一面
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