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堅石も
第一章

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                堅石も
 応神帝の御代のことである。
 この頃日本に百済から多くの者が渡来してきていた、帝は彼等を受け入れると共にこんなことを言われた。
「あちらでは騒ぎが絶えぬな」
「はい、三国に分かれていますので」
「百済に新羅、高句麗と」
「我等の領土もありますが」
「この三国が常に争っておりまする」
「それでだな」
 帝は厳かな声で言われた、威厳に満ちた確かなお顔であられる。
「その乱を逃れる為にも」
「百済からです」
「多くの者が来ております」
「そして様々なものを伝えてくれています」
「有り難いことに」
「そうであるな、その中にだ」
 帝は微笑んで言われた。
「酒もあるな」
「はい、そちらもです」
「あの者達は伝えてくれています」
「あちらの酒を」
「そうしてくれています」
「そうだな、だからな」
 それでというのだ。
「本朝の酒のとだ」
「百済の酒をですな」
「共に楽しめますな」
「有り難いことに」
「そうだ、だからな」 
 それ故にと言われるのだった。
「どちらの酒も飲みそれ等を合わせ」
「よい部分を合わせ」
「そうしてですな」
「よりよい酒を造りますな」
「そうしようぞ、酒も美味ければな」
 そうであるならというのだ。
「美味い程よいであろう」
「はい、確かに」
「その通りです」
「それではです」
「まずはどちらの酒も飲み」 
「よい部分を見極め」
「一つにしようぞ」
 こう言われてだった。
 帝は宴を開かれ廷臣達と共に酒を飲まれた、楽しまれると共に日本それに百済の酒のよい部分を確かめられたが。
 酒を造った須須許理、百済から来た面長の顔の彼が帝に話した。
「酒はやはり米と水です」
「その二つから造られるからな」
「この二つが同じであるなら」
 そうであるならというのだ。
「多少造り方が違えどです」
「同じ味になるか」
「そうなります」
「そうであるか」
「日本の米と百済の米は違います」
「同じ米でもか」
「種類も土もです」
 その両方がというのだ。
「そしてです」
「水もか」
「違いますので」
 だからだというのだ。
「百済の造り方でも百済の酒にはです」
「ならずか」
「かなりです」
「日本の酒になるか」
「左様です」
「そうであるか。面白いな」
 帝は須須許理の話を聞いて微笑んで言われた。
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