第一章
[2]次話
もう親じゃない
大林朔也は八条リーグのプロ野球選手である、所属しているチームでは三番ライトで三十歳になるがそれまで三度首位打者を獲得している。
俊足で守備も肩もいい、所属しているチームでは主力選手だ。一八〇程の背で痩せていて色白で長方形の顔で黒目がちの目は小さい。
彼は練習を欠かさない、その練習は科学的で近代的なものを意識しているが。
昭和のとある漫画を読んでだ、彼は試合の後一緒に酒を飲んでいるチームメイトでキャッチャーをしている八奈見忠太四角い顔で大柄でがっしりとした体格に太くきりっとした顔の彼に言った。
「大リーグ養成何とかなんてやっても」
「意味ないよな」
「何なんだろうね、これ」
「昔はいいって思われていたんだろ」
八奈見は大林に冷静な顔で答えた。
「そうしたものを使ってな」
「身体を鍛えるって」
「思われていたんだろ」
こう言うのだった。
「昭和の頃は」
「そうなんだ」
「そしてな」
八奈見はさらに言った。
「兎跳びだって」
「ああ、あれね」
「やってたし」
「あれは駄目だよ」
大林は一言で述べた。
「やったら」
「そうだな」
「足腰を鍛えるどころか」
むしろというのだ。
「痛めるから」
「そうだな、けれど昔は」
「いいって思われていたんだ」
「そうだよ」
八奈見は白ワインを飲みつつ話した、二人共酒は飲んでも身体に気を使って飲んでいる酒はそちらである。
「あくまで昔はな」
「今じゃないね」
「そうだよ、厳しくてな」
「暴力もあって」
「そんな時代だったんだよ」
「成程ね、それでだね」
大林はだし巻き卵を食べつつ言った。
「獅子は敢えて我が子を千尋の谷に突き落とす」
「それで這い上がった子供を育てるな」
「そんなこと言ってたんだ」
「昔はな」
「はっきり言ってね」
大林は冷静な目で言い切った。
「そんなこと実際にやったら」
「警察呼ばないとな」
「僕呼ぶよ」
真顔での言葉だった。
「そんな親いたら」
「俺もだ」
八奈見も同意見だった。
「そんなことする奴はもうな」
「親じゃないね」
「人のな、もう即刻な」
「児童虐待で」
「警察に突き出さないとな」
法律の話だというのだ。
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