暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第212話:揺れ動く心
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るのなら、ここで下手な態度を見せると今以上に彼女やこの場に居ない2人への扱いが悪くなる。最悪、オーガの餌にされるかもしれないと思ったら、間違っても奏の話に頷く訳にはいかなかった。

 それを知ってか知らずか、奏はヴァネッサ達の現状を推測を交えて踏み込んできた。

「別に無理して信じろなんて言わねえよ。それが難しい事くらい分かる。アタシが言いたいのは、お前ら連中に脅されてるんじゃないかって話だ」

 奏からの指摘にヴァネッサの呼吸が一瞬止まった。図星を突かれ、助けを求めたい気持ちと従わなければならないと言う恐れが鬩ぎ合い喉元で声が詰まったようだ。
 辛うじて表情には出さずに済んだヴァネッサではあったが、しかし奏相手には無意味であった。事人の裏をかく事に関しては天才的な颯人と、ブランクを抱えながらも長く接してきた彼女からしてみれば、ヴァネッサの内心を読み取る事くらいは造作もない事であった。

――やっぱりそうか……こりゃ面倒だぞ――

 ヴァネッサ達がただ単に利益目的でジェネシスと組んでいる訳ではなく脅されている事を察して奏も思わず苦い顔になる。こういう輩は下手に交渉してもこちらには靡かない。寧ろ人質が居る分、逆になりふり構わず突飛な行動に出る可能性もあった。
 その事で奏が悩み始めるとヴァネッサの方も何かを察せられた事に気付いたのか、手首を展開させてグレネードを発射して奏にそれ以上考えさせないようにしてきた。

「悪いけれどッ!」
「あっ!?」
「奏さんッ!」

 飛んできたグレネード弾が爆発して黒煙が奏達を覆い隠す。だが風で煙が流されると、そこには3つの短剣でシールドを張り2人を守ったマリアの姿があった。その様子にヴァネッサも思わず舌打ちをしてしまう。

「チッ……」
「2人共!」
「悪いマリア、交渉は失敗だ」
「なら、力尽くで!」

 交渉でヴァネッサが投降してくれれば話は早かったが、それが失敗に終わった今、もう手段を選ぶ理由は無い。無理矢理にでも押さえつけて大人しくさせる。仮に脅されていたのだとしても、力尽くで捕らえられたのであればジェネシスだって残された2人に対して手荒な真似はしないだろう。少なくとも即裏切りとは断じられない筈だった。
 それが希望的観測に過ぎないと言う事は心の片隅で理解しつつ、これが彼女達をも救う為の一手と信じてマリアはヴァネッサを攻撃した。

 接近して素早く斬りつける。直接殴り掛かる響ほどの素早さは無いが、鋭く奏よりも早い。その斬撃をヴァネッサは紙一重で回避してマリアから距離を取った。

「残念だけれど、そう簡単にはいかなくてよ?」

 マリアの攻撃を回避し、飛び越えた先でワイヤーで繋がれた腕を飛ばしてきたヴァネッサ。それを蛇腹剣で弾き返したマリアは、一瞬の隙を突いて
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