第一章
[2]次話
もう通用しない
根室寿は自宅のリビングで朝から怒っていた、それで妹の千佳に言っていた。
「堀内の文章読んだよ」
「あんなの読むから駄目なんでしょ」
妹は怒った目と顔で応えた。
「不愉快だっていうのよね」
「朝からそうだよ」
「何とか太郎の遺言ね」
「週刊ベースボール読んでたら」
二人はそれぞれ毎週読んでいるのだ。
「たまたま開いたページがそうだったよ」
「あの偉そうな文章ね」
「品も何もなくてね」
「だってあいつ暴力振るうのよ」
妹はこの実話を話した。
「川相さんにね」
「飛び蹴りの後殴り回したな」
「そうよ、あいつがヘッドコーチの頃にね」
一九九八年のことである。
「選手の人達全員に雨の日によ」
「何かの罰則でだったね」
「グラウンド走らせたのよ」
「それで自分は球場の中の食堂にいて」
「マスコミの人達と楽しくお喋りよ」
「最悪だね」
兄はジャムを塗った食パンを食べつつ応えた、ジャムは苺である。
「うちの部活でそんなこと絶対にしないよ」
「中等部のスキー部でも」
「しないよ」
全否定の言葉だった。
「何があってもね」
「そうよね、お兄ちゃんもね」
「する筈ないから」
やはり全否定で言うのだった。
「何があっても」
「正しいわね」
「それで堀内のそれに清原が怒って」
「ロッカールームで暴れたのよ」
「その後を川相さんがなおしていたのが」
「そう、川相さんらしいわね」
千佳はまさにと言った。
「本当に」
「あの人はそうした人だな」
「真面目でね、けれどね」
それがというのだ。
「堀内はそれを見て」
「川相さんがやったと思ってな」
「話も聞かないでね」
これも本当のことだ、こうしたことを平気で行うのが堀内恒夫という輩なのだ。
「いきなりだったのよ」
「後ろから飛び蹴り」
「暴力でね」
千佳は忌々し気な顔でオムレツを食べつつ言った、オムレツの上には赤いケチャップがたっぷりとかかっている。
「しかも後ろから」
「最悪だね」
「そしてその後で」
何があったかも聞かずいきなり後ろから飛び蹴りを行ってというのだ。
「何度も何度も殴ったのよ」
「本当に酷いね」
「それが堀内よ」
「最悪な奴だよ」
「選手としては凄かったけれど」
名球会に入ってはいる。
「けれどね」
「人間としては最低だよ」
「そう、そんなね」
それこそというのだ。
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