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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
第24話トリューニヒトの大政略
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ことになるでしょうな」
探りを躱す方がよほど気が楽である。
「その為にも人事案をまとめる必要がありますね」
ロムスキー【代表世話役】は正面を見据えたまま小声で話す。
「我々は現状維持、大きく動かさないのであれば案には口を出す予定はありません。もちろん【国防行政も含めた包括的な戦災復興のための改革】の実施のために、ですが」
トリューニヒトは頷いた。――これで51票を固めることができた。上院の1/6だ。カーティス国務委員長の握る105票を得るにはさらなる取引が必要だ―だが院内会派の連中は一定争点には犯罪結社じみた団結を見せる【縦深】と異なり気ままである。レベロはシトレとも距離を置いて様子見に回っている。既に彼の眼は”もう終わった”シトレを軍官僚の有力者としては排除し、【縦深】の復興法案を見据えているのだろう。
「だからこそ、こうした場が大事なのだと実感するよ。政治に興味のない者たちから見れば、腐敗と癒着の場かもしれないがね。――ご意見拝聴、ご意見拝聴、大事なことだ」
「仰せの通りです。与党が交戦星域を見てくれている。こうした情勢が変化しているさなかであれば重要なことです」
エオウィンの言にトリューニヒトは鷹揚に頷き、執行部のイロンシを除く面子は複雑な視線を向けた。【縦深】は常に気ままでありながら上院院内会派有数の結束を誇っている。だが――下院のいわゆる同盟政党(構成邦政党連合の側面も色濃い)としては保革大連立ともいえる状況だ。そして絶対的な有権者との誓約こそが【対帝国絶対防衛戦】の遵守である。これこそが党派を問わず【民主主義の縦深】が団結し続けた要素であり存在意義だ。
戦災復興も同じく絶対的な誓約となりうるだろうか?なるかもしれない、だがその方法論は略奪者からの防衛と異なり多様な議論が必要となるだろう。同盟全体にとって議論は全く正当なものであるが、【民主主義の縦深】の堅固さには――どうなるだろうか?
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それから2時間後のことである。同じホテルの小会議室でヨブ・トリューニヒト国防委員長は満足そうに演台へ向かって歩く。
「やあ皆さん、大変だったねえ、うとうとしてしまった人居る?居ない?そりゃよかった。今から寝ちゃう人が出たら私の不徳の極みってことだ」
記者たちが声をあげて笑う。トリューニヒトは微笑みながら演台へ登り
「さて――」
そして会場の空気は変わった。ある記者はレコーダーを起動させ、ある記者は文字起こしのためのタイプを始める。
「自由惑星同盟の皆さん、イゼルローン要塞から送り出される略奪者に脅かされてきた同盟市民の皆さま。私、ヨブ・トリューニヒトと我らがチェアマン、サンフォード最高議長は、この喜びを市民の皆さまと共有させていただ
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