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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
第24話トリューニヒトの大政略
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。同盟弁務官の皆様が参列していただけるのはありがたい」







「宇宙軍の兵站は、活発な星間輸送によって支えられています。長期に渡る侵攻は人材不足の深刻化により流通産業のみならず、流通によって支えられている地域経済の持続可能性が――」

「ご意見をありがとうございます。国民生活と流通の安定に向けて宇宙軍は、戦死者の抑制と軍民が連携した人材育成へ、同盟全体の星間流通産業と連携し――」

 

 官僚たちと地方財界要人たちの問答をトリューニヒトは満足そうに聞いていた。同盟弁務官達へ向き直り、彼は口を開く。

「本来の―本来の健全な在り方からするとこうした意見交換会で民生の花がメインになるのはよろしくない、そう思わないかな、皆さん?」

 

「経済面の話で真っ先に出向く先が国防部局、通常の経済体制とのバランスが必要である点には同意します」

 ロムスキーは同意するが、ヴァンフリート民主共和国のイロンシ弁務官は苦笑いを浮かべている。

「ウチじゃピンとこない話ですがね。なにしろ親征帝からこっち、延々と戦場清掃やらで食ってきたわけですから。ですが――」

「ダゴンで帝国と接触する前には、確かに我々は平和への道を歩んでいました。人民元帥は象徴的元首への道を徐々に歩み始め、議院制内閣への道や産業の多角化への道を進んでいました。誰も覚えていない、記憶の中の話ですがね」

 トリューニヒトは小さくうなずくだけだった。彼が大学で学んだ歴史からするとそう返すしかない。

 ヴァンフリートで暮らす個人にとっては黄金の自由を満喫できた時代であり、ヴァンフリート民主共和国にとっては‥‥どうだろう?当然のように現れる「実質的な独立国家群」から「連邦」への移行が生む自由化、広大な【未開拓惑星(フロンティア)】の誘惑、そして何より飢えることに怯えず、海賊と争う覚悟さえあればどこへでも行ける時代。

 それは統計的には暗黒の時代である。人口流出、産業の多角化といえば聞こえはいいが国策企業の衰退、そして盟邦、ティアマト民国はまだしもパランティア連合国やエル・ファシル共和国の投資に左右され豊かになろうとも揺らぐ国家主権――だがそれはいま問うべきことではない。トリューニヒトがまったくしがらみも思い入れもない学生だった時代には「当然でしょう、平和であればあの国は消えてなくなるべきです」と断言した。だが――今はそれを口にしない、立場と経験が生む共感は若いころの自由さを奪っている。

「いずれにせよ、良き時代を迎えるためにも要塞と配備する部隊、そして指揮系統を考えねばならんでしょう、閣下?」

 リヴォフの言葉にトリューニヒトは微笑みを浮かべたまま視線を向ける。

「ええ、我らがチェアマンとシトレ本部長と共に協議する
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