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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
第24話トリューニヒトの大政略
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国防委員長のデスクにある音声通信機を起動させる。コール、コール、出た相手は秘書らしい成年だ。彼に転送を依頼する‥‥数分後、国防委員長室の端末が呼出音をならした。
国防委員長が軽やかにタップすると画面の向こうにエオウィン・イシリアンの姿が浮かんだ。パルメレント連合国同盟弁務官、年若い俊英である。
「やあイシリアン女史、私だよ。すまないが尊敬すべき縦深の皆さんに伝えて欲しいことがある。トリューニヒト国防委員長がエルゴンで交戦星域の経済連合会に参加するとね‥‥」
パランティア連合は交戦星域有数の経済大国であり、彼女を通せば手はずは間違いなく整う。だが理由はもちろんそれだけではない。
「もちろん都合が悪いなら無理にとは言わないさ。本来なら副委員長のネグロボンディ君と統合作戦本部から中将クラスを1人で済む話だからね」
「決まっているだろう?『誰かがヘマをし終えた時』が私の動く時さ。つまり今だよ」
「安心したまえ、悪いようにはしないさ。票をくれるのならばね。アシリア女史にもよろしく伝えてくれたまえ」
通信を切るとトリューニヒトはペンをくるくると回しながらドーソン大将が取りまとめた統合作戦本部の人事案に目を通し始めた。
――さて、そろそろこのコメディも終わらせる時だ。
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エルゴン星系第3惑星は、適度に重力が弱いだけでなく、地殻が安定している地域と気候が安定している地域が重複しており、宇宙港との接続と居住性が両立している。国防委員会イゼルローン方面国防支局が設置されている。当然ながら国防委員会の外局の中で最も多忙な外局である。縦深執行部はそこを久方ぶりに訪問している。
「国防委員長閣下が【条約機構】にわざわざバーラトから?この時期に?」
ロムスキーが口にした言葉を聞いて、また懐かしい肩書を、とリヴォフは肩をすくめた。
「皆無ではないがこの時期というのは珍しいだろうな。そうした位置づけの場所だ」
エルゴン星系は厳密に言うと統一政府は存在しない。中間星域と交戦星域を繋ぐ【ゴールキーパー】として【パルメレント・コモンウェルス】と並ぶ一大拠点であるが、その実態は同盟控訴裁判所(旧同盟巡回裁判所)や駐留艦隊や地上軍・構成邦軍の支援を管理する国防委員会方面総局や人的資源委員会、法秩序委員会のような政府機関の外局などが集まる同盟直轄地とティアマト自治領、アスターテ連邦の『国有港』などが集まり、疑似的な連合国‥‥共同理事会とその下に警保局・財務局・防衛局・流通局の4局のみで統治され、司法は構成邦法と同盟法によって各領で行われている。
正式的には“エルゴン星共同理事会”なのだが‥‥ロムスキーは条約機構、と呼んだ。
エル・フ
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