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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第105話 憂国 その5
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「また準現行犯として拘束する事由として、『笑った』という事実のみ提示している。この国は笑っただけで、抵抗し公務執行妨害となるとは、どういう規則で貴官は行動しているのか?」
「……」

 指揮官の顔色が赤から青へと変わっていく。どう見ても底辺労働者の相手が、堂々と倫理規定に沿って自分を弾劾してきている事実と、もしかしたら潜入捜査員(どうぞく)を不用意に拘束しさらに暴行してしまったのではないかという恐怖。実際今の俺は間違いなく準現行犯(身体および被服に犯罪の顕著な痕跡がある)なのだが、それを頭の鈍い指揮官に教えてやる必要は全くない。

「貴官が誰の命令を受けて小隊を率いてきたかは知らんが、任務の邪魔をするというのであれば、こちらとしても相応の考えがある」
「……いや、その」
「この通路に横たわっている『道化師』共が乱入し、民間人に暴行を加えようとした。彼らの手には人数分の非殺傷兵器がある。騒乱罪と暴行罪と武器集合罪の現行犯だ。残念なことに証拠も撮影されている。それは『本来の意図ではなかったのだが』」

 俺のハッタリに指揮官の瞳が揺れる。つまり自分が潜入捜査員に暴行を加えたことすら記録に残っているということを理解したのだろう。俺がシラケた目で首を左右に振れば、両腕を拘束している警官の腕の力も弱くなっていく。

「貴官は速やかにこれら『道化師』共を拘束し、その意図を聴取すべきだろう。貴官の上官に対しては、組織として正式に抗議させてもらう。覚悟しておくんだな」

 今度こそ肩を落とした指揮官は、俺が顎でしゃくると、部下達に命じて拘束されている憂国騎士団の面々を引き上げさせた。しっかりとみな肩が外されているので、腕を持ちあげるたびに会場内に悲鳴が上がる。一〇分もしないうちに、二組の道化師達は会場から姿を消した。

「……ボルノー君」
「あぁ、ソーンダイク先生」

 おそらく俺の拘束に対し、弁護士として法に則って抗議しようとしていたソーンダイク氏の顔には、何と言ったらいいのかわからないとしか書いていない。なので、左胸のボタンを軽く押してから、俺はいつもの好青年将校スマイルを浮かべて言った。

「彼らは勝手に勘違いして引き上げたんです。先生がお気になさることはないですよ」
「しかし彼らはトリューニヒト氏のしへ……」
「『我々』は同盟軍基本法と入隊宣誓と自己の良心に従って行動するのですよ」

 俺が唇に指を当て上目遣いでソーンダイク氏に応えると、申し訳ないとありがとうの二分の一カクテルのお辞儀を俺に向けた。俺がやったのは単なる詐欺で、そこまで感謝されるいわれはないのだが、気恥ずかしさで頭を掻くと、聴客の中から一人の若い女性が飛び出してきた。それは受付に居た女子学生だった。

「あ、あの!」
 その女子学生の手には真っ
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