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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第105話 憂国 その5
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も、俺は出入口方向へと通路を進みながら団員共を無力化していく。いつの間にか痛みは消え、身体と拳と脚が一つ一つ考えるまでもなく自然に動き、暴力となって存分に発揮されている。

 まるで夢心地の中。出入口扉前で相対した団員の一人がいきなり俺に背を向けて逃げ出そうとしたので、右手で後襟首を引っ掴んで引き寄せ、左腕を首に回して後ろから右腕を絞めて捻り上げる。

「どうした。どうした。女子供は殴り倒せても、大人の男はてんでダメか。ああん?」
 マスクの奥で何か慈悲を乞うているように聞こえるが、俺は全く聞こえないふりで締め上げ続ける。
「お前らの飼い主が誰か、俺はよぅく知っているからな。せいぜい捨てられることに怯えて、首を竦めて暮らせ」

 飼い主という言葉に団員は首だけで振り向こうとするが、その後頭部にヘッドバットを喰らわせたうえで右肩の関節を外すと、情けない悲鳴を上げて気絶する。その身体から力が抜けていることを確認してから、うつ伏せにして両腕を後ろに回し、マスクを取って頭巾をひも状にして両腕を縛り上げる。

 もう俺に立ち向かってくる姿はない。出入口扉から通路を見れば呻き声を上げる団員達で埋め尽くされ、その先には唖然とした表情のソーンダイク氏と、何故か興奮気味にこちらを見ている幹部と聴客達がいる。団員は他にもう少しいたはずだったが、逃げ散ったのかそれとも増援を呼びに行ったのか分からない。

 興奮が自然と収まり、心拍が落ちて、同時に背中の痛みも戻ってくるが、呻いている団員が逃げ出さないとも限らない。今度は演壇方向に向かって、団員達のマスクを一人一人?ぎ取り、同じように頭巾で拘束していく。抵抗しようとした奴はスタンガンで再度無力化し、肩を外すのも忘れない。

「このままで、済むと思うなよ。孺子」

 紫色の頭巾をしていたリーダーが俺の膝下でそう言うので、何も応えることなく露出した後髪を引っ掴むと、何度も床に叩きつけた。たぶん鼻が折れた音がしたが気にしない。額も切れて顔中血だらけになり息絶え絶えになったのを見てから、リーダーに顔を寄せる。

「飼い主を道連れにしたいってんなら、幾らでも相手になってやるよ。躾のなってないお嬢ちゃんたち(レディース)」

 そうやって最後に一撃、横腹に蹴りを打ち込んでやると、リーダーは蛙のような呻き声を上げて床でのたうち回る。その横に立ち上がって、換気音だけが響く少し暗い照明の下で、大きく両手を伸ばし、最後まで奥に溜まり込んだ闘争心を肺から追い出した。凝りを解すため首を廻しながら見渡すと、先程まで興奮気味に見ていた聴客の顔は、今度は恐怖で引き攣っている。

「ぼ、ボルノー君」
 そんな中でやはり最初に声をかけてきたのは、ソーンダイク氏だった。
「大丈夫かね? その……」
「治安警察への通報は
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