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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第105話 憂国 その5
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ダイク氏をロムスキー氏と同じ目に合わせるのは、原作を知る者としては些か癪に障る。

 ソーンダイク氏とリーダーの間に漂う張り詰めた緊張の沈黙。だがリーダーの右足が音もたてず二度床を叩いた時、俺の左前に位置する団員の身体に力が入っていくのがわかった。
 リーダーがソーンダイク氏に反論する素振りで、何気なく体を反時計回りで団扇型拡声器を後ろにいる団員の一人に手渡すよう振り向いた時だった。左半身になったリーダーの右隙間を抜けて、団員が棒状スタンガンを振り上げて俺に突っ込んでくる。そしてほぼ同時にリーダーが、団扇を受け取った団員のスタンガンを抜いてソーンダイク氏に襲い掛かってきた。

 同時攻撃によって護衛(俺)の混乱を招くつもりだったのだろう。だが『護衛官の仕事』は身を挺しても護衛対象を守ること。俺は左斜めに(つまりはソーンダイク氏に向かって)踏み出して突っ込んできた団員の攻撃を躱しつつ、右腕でソーンダイク氏の襟首を引っ掴んで真後ろに引き摺り倒す。その反動を回転運動に変え、左腕を左側頭部に当て防御すると、背中をリーダー側に向けて衝撃に備える。ほぼ予想通りそのコンマ五秒ぐらい後で、俺の左肩甲骨上部にスタンガンが直撃した。

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 軍服ではないので当然防電処置はされていない。背中の神経をはいずり回るような電撃と、棒自体の物理的衝撃が合わさって、俺はたまらず声を上げて両膝を突く。その背中にもう一撃、恐らくは躱した団員からのが浴びせられる。ついで左脇から嫌な気配を感じたので、足を?がれた芋虫のように床を転がると、俺の腹に向かってきたリーダーの蹴り上げを何とか躱すことができたが、遥か頭上から舌打ちが聞こえてくる。

「ボルノー君!」
 俺に引き摺り倒されていたソーンダイク氏が、よちよち歩きで床を進んで、床に仰向けで荒い息をする俺の傍に寄ってくる。触った手から俺の身体にまだ痺れが残っていると分かったのか、想像よりはるかに大きな声でソーンダイク氏は、一様に恐怖に囚われている若い聴客達に向かって叫んだ。
「救急車だ! 早く連絡を!」
「ソーンダイク先生」
「ボルノー君はそのままでいたまえ!」
「大丈夫。もう、大丈夫です」
 ゆっくりと、まるで舌なめずりする蛇のように近寄ってくる憂国騎士団の足音を床面から聞きつつ、俺はソーンダイク氏の左肩を頼りに立ち上がりながら、フラグを確認する。
「正当防衛条件、これで成立しますよね?」
「ボルノー君!」
「ゾーンダイク先生!」
 襟首をつかんで顔を近づけてからの俺の叫び声に、ソーンダイク氏の視線が宙を泳ぐ。だが次の瞬時には弁護士モードになったのか、それとも俺がこれからなにをしようとしているのか分かったのか、声を上げる。
「た、確かに急迫不正の侵害と防衛の意志は認められ
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