暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第211話:非情にして無情
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翼さん……」

 確かに彼女の言う通り、未だ今回の件に関しては解決の兆しも見せていないし、呑気に遊んでいる暇はない。生真面目な彼女らしい返答に、奏と響は何とも言えない顔になってしまう。実際翼の言う通りではあるし、カラオケをしている最中に何かあれば即座にそれに対応しなければならないのではあるが。

「でも……」

 と、ここで翼が急に声のトーンを変えた。肩から力を抜いた様な声色に2人が翼の顔を見ると、そこには先程とは打って変わって穏やかな笑みを浮かべた翼の顔があった。

「たまには、息抜きをする事も必要ね」
「それじゃあ……!」

 期待を込めた響の声に、翼は頷いて答えた。それを見て奏と響は満面の笑みでハイタッチを交わすのだった。




***




 ノーブルレッドがアジトとしている廃棄物処理場跡。普段滅多に人が立ち寄らないその場所に、この日は珍しく来客があった。
 ジェネシスとも手を組んでいる、風鳴 訃堂とその部下達である。

 護衛を伴って入って来た彼に、最初に気付いたのは獣人のエルザであった。

「ッ!」
「お早い到着。せっかちですのね?」
「腕輪の起動、間もなくだな?」

 ヴァネッサからのちょっとした皮肉に眉一つ動かさず、訃堂は周囲をじろりと見渡しながら逆に問い掛けた。
 その際、何故かこの場に居るワイズマンとファントムのオーガの姿に、僅かに眉間に皺を寄せる。

 訃堂が見せた僅かな反応に、しかしヴァネッサは気付く事もなくコンソールに向かい操作を開始した。

「……聖遺物の起動手段は、フォニックゲインだけではありません。7つの音階に照応するなら、7つの惑星……その瞬き……音楽と錬金術はあり方こそ違えど、共にハーモニクスの中に真理を見出す技術体系」

 ヴァネッサが解説しながら操作を続けると、説明通りに7つの惑星の瞬きに照応した音階が室内に響き渡る。それが封じられていた腕輪へと伝わり、激しい放電のような光と共に覚醒させる。

「この日この時の星図にて、覚醒の鼓動はここにありッ!」

 眩い光と共に腕輪を収めていたケースが弾け飛び、直後全ての光が収まり静寂が辺りを覆った。起動が完了したにしてはあまりにも静か過ぎる状況に、ヴァネッサも不安の声を抑える事が出来ない。

「起動完了……なのよね?」

 不安を口にするヴァネッサに代わり、ミラアルクが腕輪に近付き手に取ろうとする。だがその腕を、横から伸びた訃堂の手が掴んで引っ張り上げた。

「えっ!?」

 突然腕を引っ張り上げられた事に、ミラアルクは咄嗟に手を振り払おうと力を籠める。だが驚くべき事に、掴まれたてはピクリとも動かせず老人とは思えに膂力に驚愕せずにはいられない。

 ミラアルクの驚愕を他所に、
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