第三部 1979年
迷走する西ドイツ
暮色のハーグ宮 その2
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
う嘆じた。
「因縁だな……」
マサキは覚悟をしていた。
死に直面しつつある。
最上階のドアの向こうには、誰が待っているのだろうか。
エレベーターが最上階に着くと、マサキ達は最上階の内務大臣室に連れ込まれた。
彼等を待っていたのは、意外な人物だった。
青い顔をしたマイホーファー内相と、ヴィリー・ブラント前首相だった。
「まず、木原博士たちの手錠を外してやりなさい」
「はい」
ブラントの鶴の一声で、刑事たちが一斉に手錠を外す。
マサキ達は解放され、ヴェーバーとニーメラはKGB工作員と共に別室に連れていかれる。
「今しがた、ヴァルター・シェール大統領が辞意を表明されました。
近日中に、ヘルムート・シュミット内閣が総辞職し、連邦議会は解散されることとなりました」
「エッ!」
「ドイツ連邦始まって以来の大騒動になりそうです」
「何が一体、どうなっているのだ?」
突然、マサキの後ろのにある入り口が開いた。
振り返ると、裃姿の偉丈夫が立っている。
「御剣閣下、来てくれたんですね」
白銀が感悦の声を上げ、御剣に駆け寄った。
「可愛い部下たちが窮地に陥っているのに、見過ごすわけにはいかんだろう」
鎧衣は凝視するのみで、何もいわなかった。
ただ無量な感慨につつまれている姿であった。
「外務省や情報省では埒が明かんからな。
国連経済社会理事会を通じて、直接ドイツ内務省に働きかけたんだ」
経済社会理事会とは、国連憲章第10章の規定により経済と社会問題全般に関し、勧告等を行う委員会である。
内部組織に国連人権委員会があり、そこでは国家による拉致に関して、人道上の罪に問う措置をみせていた。
国家による拉致とは、早く言えば秘密警察による司法手続きを踏まない拘束や逮捕の事である。
狭義の意味では、共産国家による悪辣な人権侵害事案――ソ連のシベリア強制抑留や北鮮の拉致事件、シュタージなどによる誘拐事件など――である。
「折角ドイツまで来たんだ。
このぐらいの挨拶はしなきゃな!」
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ