第三部 1979年
迷走する西ドイツ
暮色のハーグ宮 その1
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ャーの顔色もうすく変っていた。
「このおたんちんが!」
蘭政府関係者の謝罪より早く、キッシンジャーの言葉が飛んだ。
「貴様らは、このキッシンジャーの頭をそれほどまでに抑えたいか!
貴様らの動きが、営々として築き上げてきた米ソ緊張緩和の動きに終止符をうつわ!」
ゾッと身の毛を立てて、蘭政府関係者は下を向いてしまった。
そして、巣にもぐった小鳥のように、おびえた目をして、動悸を抑えた。
「お前は、この先暫くは、一切公式の場に顔を出すな!」
王配殿下は、早く帰れと言わないばかりの態度。
キッシンジャーの眉間みけんにムッとした色が燃える。
だが、一緒に来ていたブレジンスキーが強く変ったのを見ると、にわかに、腰の弱い妥協性を出した。
「ゼ、ゼオライマーのパイロットとは、ほ、本当に知らなかったのです……
た、ただ、東西ドイツに入り浸っている日本軍の衛士としか……」
米側の動きは、オランダにとって全くの寝耳に水だった。
なぜなら、オランダは西欧四か国で進められているトーネード計画を密かに離脱して、最新の米国製戦術機を導入することで話が進められていたからだ。
ジェネラル・ダイナミクスが、開発中のYF−16ファイティングファルコンを実用段階以前から大規模導入することを決めていた。
そして、ジェネラル・ダイナミクスのみならず、敵対企業のマクドネルなどからも多額の賄賂を貰っていた。
米側は、この国家規模の汚職を見て見ぬふりをしてきた。
だがゲーレンとの接触で、マサキが蘭王室の闇を知ったので、状況が変わった。
キッシンジャーやブレジンスキーは、この機に乗じて、蘭王室を切ることにしたのだ。
重苦しい沈黙を破って、言葉をかけたのは、チェースマンハッタン銀行の頭取だった。
米国有数の銀行である同行の頭取は、ビルダーバーグ会議の常連メンバー。
「殿下、今日からあなたは病気だ。いいね」
「エッ!」
続けて、ブレジンスキー大統領補佐官が言う。
「病気療養のため、ビルダーバーグ会議の議長を辞任……
いいね」
「ブ、ブレジンスキー大統領補佐官!」
「我が合衆国に、これ以上資金援助する義務はない!」
ブレジンスキーの言葉に、王配殿下が強い語調で言い返した。
「ふざけるな!この帝国主義者め!
これはオランダへの、内政干渉だ」
「干渉するのは当然だ!
これは政権を担う大統領補佐官として、何よりも先に優先せねばならない事項だ!」
「こちらの要求には、電子産業を含めて、何一つ明確な返答をしていない。
そんな国に、これ以上の援助が必要かね……
もし必要なら、その提供した資金に対して、報告書が必要という事だ。
今までの資金援助が、いつ、どこで使われたか、我々にも知らされていない。
援助によって、オ
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