第三部 1979年
迷走する西ドイツ
暮色のハーグ宮 その1
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な発展をとげた』と手放しで、一党独裁の経済政策をほめそやす面があった。
ブレジンスキーが大統領補佐官であった時期(1977年1月20日から1981年1月20日)。
――時の大統領を説得し、泥沼のアフガン情勢に飛び込み、結果として米国の戦力を著しく低下させた――
などという説が、米国内ではまことしやかに流されるほどである。
そして驚くべきことに、ブレジンスキーのすぐそばにKGB工作員のチェコ人が助手として存在したのだ。
同人は、チェコスロバキアからの亡命者を装って、コロンビア大学に入学し、CIA工作員になった。
のちに同人は、FBIの操作とKGB内部に潜入したCIAスパイによって、スパイであることが露見し、ベルリン経由でプラハに帰国した。
今も存命で、時折ロシアのメディアに出る健在ぶりである。
さて、話を再び異界の物語に戻したい。
翌朝、ボンに米国政府高官の非公式訪問の連絡が入った。
その時、首相府では、夜を徹したマサキ対策の臨時閣議が行われている最中であった。
「何、元大統領補佐官のヘンリー・キッシンジャー博士が、シュトゥットガルトの米軍基地に!
ど、どういう事だ」
会議を主催する首相は、報告を伝える首相補佐官に驚きの声を上げた。
一様に青い顔をする閣僚たちに向けて、補佐官は米国側の動きを伝える。
「米国大使館に問い合わせたところ、返答が来ました。
公式の訪問予定は入っていないそうです」
「全くの非公式という事かね……」
「しかし、何のために……」
キッシンジャーの突如としたドイツ訪問に、慌てたのはシュトゥットガルトの米陸軍基地ばかりではない。
近隣の航空基地であるラムシュタイン空軍基地まで、いつになく物々しかった。
上空を空中警戒機C-130 ハーキュリーズが行き来し、戦術機までが何機も飛び回っている。
昨年三月の東独政変以降、シュトゥットガルトの警戒態勢は格段に上がった。
ドイツ南部に対する警戒網は倍以上に増えたが、その日は常にもまして多かった。
最重要人物の為に、米駐留欧州軍の司令以下がその対応に追われている最中である。
突如として、キッシンジャー博士一行が、SH-3 シーキングでオランダ方面に飛び立ったのだ。
早朝のアムステルダムは騒がしかった。
市の中心部にあるハウステンボス宮殿に、突如として現れた米海兵隊の大型ヘリコプター。
米海兵隊の精兵50名に守られた関係者は、オランダ側の制止を無視し、宮殿に突入した。
折しも、蘭政府から王配殿下にマサキ襲撃事件の失敗が伝えられている最中。
「貴様ら、米国人には関係のない問題だ。
さっさと帰れ、このユダヤ野郎!」
不用意に、突然そういってしまってから、王配殿下はハッと思った。
キッシンジ
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