第三部 1979年
戦争の陰翳
苦境 その1
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螂之斧。
准尉官という、一下級将校に出来ることは、限られてくる。
懇意にしている榊などに金を出して、派閥などの政策グループを立ち上げるにしても時間がかかる。
かといって、この国を暴力でのっとったところで正当性には欠けるだろう。
やはり、鉄鋼龍を作った時と同じ時間をかけるしかないのか・・・・・・
マサキは、失意のどん底のように落とされたかの如く、鬱々としていた。
マサキの想いをよそに、晩餐会は華やかに進んだ。
通例ならば、豪勢なフランス料理と共にワインが供されるのだが、和食に日本酒だった。
外交の場で供される料理は、それそのものが極めて政治的である。
相手国が自国をどう評価しているかの目安になり、メニューにメッセージや皮肉が込められることもある。
その事から、しばしば饗宴外交とも称され、政治的駆け引きに利用されることすら、ままあった。
首脳たちは不慣れな箸を使いながら、風変わりなディナーに舌鼓を打った。
宴もたけなわの頃、イタリア首相から昨今の欧州経済に関する話題が上がった。
特に問題視をされたのは、西ドイツの急速なインフレーションだった。
表面上、西ドイツは、世界第3位の国内総生産を誇っている。
だが、BETA戦争の影響で、ソ連からの地下資源の供給が低下し、燃料費の高騰に苦しんでいる。
(1993年以降、GNPに代わり、海外からの純利益を取得した物を付け加えたGDPが経済指標として用いられている。
この作品は1970年代から1980年初頭をを話題にしているので、GNPという言葉を使う事とする)
電気代などは1973年に比して、6倍から10倍に上がった。
冬場に限っても、一月1000マルクほどまで高騰を続けている。
(1980年の西ドイツマルク=日本円 1西ドイツマルク=295円)
これまでは夏だったのでガス需要が抑制されていたため、危機的な状況には陥ってはいない。
しかし、割高であっても背に腹は変えられず、エネルギー確保を優先した。
そのため、物価高が西ドイツ国内に広がったのだ。
ソ連の石油を格安で手に入れて経済発展をしてきたのは、東独ばかりではなく、西独も同じである。
格安の資源を買い、それを使って、第三国に自動車を輸出し、利益を得る。
この様な経済発展のモデルは早々に破綻する、という見解であった。
その他にも問題視されたのは、東欧諸国の動向である。
ソ連との対立による危機や経済制裁解除後の貿易再開による消費活動の活発化も、西ドイツの負担になった。
主力の自動車産業も燃料費の高騰から、生産量の縮小を視野に入れた政府からの要求が出たばかり。
燃料費の高騰は、物価高にも派生し、住民は非常な生活苦に陥っているという。
西ドイツの急速なGNP
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