第三部 1979年
戦争の陰翳
苦境 その1
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場面は変わって、日本帝国の首都、京都。
再び視点は、マサキ達の所に戻る。
マサキは、ミラから米国の現大統領に関して、詳しく話を伺っていた。
今回のサミットで、米国大統領の協力を得るためである。
マサキは、この異界では日本以外の殆どの政治家がそのままだったので、てっきり大統領は史実通りと思っていた。
だが、英国王が、史実通りの女王ではなく、老境を迎えた男の国王であったように……
王冠を賭けた恋――年上の米人・シンプソン夫人との色恋沙汰――で退位したはずのエドワード8世が、長らく王位にあったのだ。
だから、史実通りの第38代大統領ではなく、見たことも聞いたこともない男であることには、正直驚きは隠せなかった。
ハリー・オラックリンが、どういう人物かは、新聞雑誌ですでに下調べはしてある。
だが人情として、米人のミラの口から、その人となりを、聞いてみたくなったのだ。
「戦争中に海軍にいたのは判った。
だが、それがなんで日本に不利なんだ?
あのケネディも、ニクソンも、フォードも海軍将校だが……
建前として、個人的な憎しみと国家的な利益ぐらいは分けていたぞ」
マサキはあきれて答えた。
自分が知る米人というのは、もう少し分別が付く人種だと思っていたが……
「オラックリンは、海軍のアベンジャー雷撃機乗りなの。
1944年のマリアナ沖で対空砲で撃墜されて、フカのいる海を16時間泳いでいたところを潜水艦に救助された。
九死に一生を得る経験の持ち主なのよ」
ミラは含みのある笑いを浮かべて、マサキの方を向く。
いろいろ言うが、彼女の本心は、この東洋人が何を知りたかったのか、考えていたのだ。
「不幸な偶然の積み重ねだな……、むしろ生きて帰ってきただけラッキーか」
まだ納得しきれていないマサキは、眉をひそめて尋ねた。
「どっちにしても面倒くさいことに巻き込まれるのか」
マサキは米軍の月面攻略が始まる前に、先んじて火星のハイヴを破壊することにした。
だが彼の動向は、政府内に潜入したGRUやKGBのスパイによって漏洩し続けているのは確かだった。
そこで、ある一計を思いつく。
既に篁とミラが完成させていった月のローズセラヴィをグレートゼオライマーの代わりに火星に派遣するという案である。
だが、パイロットがいない。
生体認証で動く八卦衆のクローン人間もいないし、マサキ自身もソ連を欺く為に国内に居なくてはいけない。
代理のパイロットに篁や巖谷を乗せるほど、彼らを信頼したわけでもない。
ではどうするのか。
ローズセラヴィーのパイロットだった葎をそっくりそのままコピーすればいい。
そういう事で、マサキは大急ぎで、予備パイロットを作ることにしたのだ。
アンドロイドをくみ上げながら、マサキはこれま
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