第三部 1979年
原作キャラクター編
秘密の関係 後編
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見ると笑っているかのようには見えたが、無理やり作り笑いを浮かべたようだった。
クゼの話を喜んでいるような表情には見えなかった。
「まあ、F‐14の公開セレモニー……
今回の慶事に乗じて、結婚式を挙げるというのも人情としては判らない話ではありませんな」
声を弾ましたハイネマンにつづいて、来賓の一人である男が言った。
「新型機の発表と、若い二人の門出。
これは本当に目出度い事ですな……
東西融和としての、米海軍基地での結婚式、良い事ですな。
早速、手配しましょう」
声の主は、現政権の国防長官であるハロルド・ブラウンだった。
彼は、1969年の第一次戦略兵器制限交渉に、米国代表として参加した人物である。
かくして、ユルゲンとマライの奇妙な結婚式が始まった。
大勢の来賓を前にして、夏季勤務服姿の従軍司祭が、淡々と決まり文句を読み始める。
それぞれ勤務服姿のユルゲンとマライは誓いを立てる。
ユルゲンはこの時、意図して教会風の言い回しを避けた。
理由は、SEDの方針として、キリスト教の信者は出世できないからである。
司祭にも、自分はキリスト教徒ではないと伝えておいた。
「私、ユルゲン・ベルンハルトは、ここに結婚の誓いをいたします。
妻マライ・ハイゼンベルクさんへの思いやりを忘れず、生涯、大切にし、愛する事を誓います」
マライは、覚悟した。
もう引き返せない。
このまま、押し切ってしまわねば……
「私、マライ・ハイゼンベルクは、本日、皆様の前でお約束します!
どんなときも、ユルゲン・ベルンハルトと支え合い、一生愛し続けることを誓います」
司祭は、用意された結婚許可証にサインをする。
そのまま二人はキスをして、結婚の儀式は終了した。
日本と違い、米国では結婚式が婚姻届とセットだった。
結婚式を必ず行わないと、法的に結婚手続きが完了しなかった。
婚姻届を役所で出す場合は、結婚式を市長や立会人の前でするしかなかった。
その他に、結婚式の司式者は、役所の許可を持つ人物でなければいけなかった。
クゼ大尉は、ユルゲンの提案を、婚姻届を出すものとして勘違いしていた。
こうして、ユルゲンとマライは、なりゆきで米国内で婚姻届を出すこととなったのだ。
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