第三部 1979年
原作キャラクター編
秘密の関係 後編
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として使われている建物に入った。
小規模なので、探すのに苦労しない。
マライは、喫茶室を兼ねた士官食堂の中に座っていた。
見慣れぬ東洋人の女とお茶をしている最中だった。
無言のまま、ユルゲンは、マライの目の前に立つ。
マライは、信じられないといった表情を浮かべてから、今にも泣きだしそうになった。
目のまえのマライは、ともすればただうつむきがちだった。
ふたりは、溶けきれないもどかしさのまま、むかい合っていた。
「少し時間があるかな」
ユルゲンはふと、こんな糸口をみつけて言った。
ひとつの話がとぎれると、あとの話題も彼がもちだすほかないのであった。
「一緒に話し合おう」
その一言で、マライの顔に赤みがさす。
ユルゲンにはそれだけで十分だった。
「俺が間違ってたよ、マライ」
そういって、ユルゲンはマライの壁を破った。
「今までの仕打ちを許してほしい……」
ユルゲンが、そこまで言ったとき、マライが唇に人差し指を置いた。
まるで、その先の言葉は言わないでと言わんばかりにである。
「許すだなんて……
私は、あなたの望みのままになりたいと思っていたのに……」
ユルゲンは、意外とはっきりと言った言葉に気圧されていた。
そしてマライは、優しくユルゲンを抱擁し、キスをした。
二人の体が密着し、周囲が見えなくなる。
ユルゲンは、唇にむしゃぶりついた。
若い男の熱さと脈動を、マライは頼もしく思った。
そして驚きは、次第に切ない感覚に変化していく。
キスに感じ入ってしまう自分に驚きながら、マライは慌てる。
彼女は恥じ入りながら、ユルゲンを唇からそらせた。
「もう、よしましょう。いけないわ……」
マライの言葉は、ユルゲンに向けたものというより、自戒だった。
ここで思いとどまらねば、どんどんエスカレートするだろう。
「君は、俺の事をこんなにしておいて、ひどい女だ」
マライは、ユルゲンのはっきりした物言いに驚いた。
男の情熱を知らないだけに、混乱してしまう。
どう対応していいか、皆目見当が付かない。
「そんな、恐ろしいこと言わないで……
もう戻りましょう。
クゼ大尉が、さっきからそこで待っているわ」
基地司令や各国の武官達が、マライの行方不明を知ったのは20分後だった。
報告が伝えられた時、その場は凍り付いたが、まもなく歓喜に代わった。
クゼが、基地司令に知らせたのだ。
まもなくクゼは、上司のヘレンカーター提督に近寄ると奇妙な提案をした。
「従軍司祭を呼んでほしいだと?」
「結婚式を挙げたいそうなんで……」
「誰が?」
「東独軍から視察に来ているベルンハルト大尉です」
副官の提案に、ヘレンカーター提督が唇をゆがめる。
傍から
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