第三部 1979年
原作キャラクター編
秘密の関係 後編
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今回のユルゲンとの情事は、他人事ではなかった。
駐在武官の不倫は、司令部や政治局にとっても一大事のはずだ。
何がどうなるか、だれがどう動くか。
皆目、見当が付かない。
ましてや、自分がどう動くべきか、猶更わからなかった。
マライは、頭の中が真っ白になったまま、基地をさまよっていた。
F‐14の管制ユニットから降りると、機体の前に一人の東独大使館員が待っていた。
ユルゲンは、参事官の姿を目の前にして、驚くと同時に嫌な予感が頭をよぎる。
「同志ハイゼンベルクが、どこに行ったか知らないかね」
彼は米軍基地への引率者で、ユルゲンとマライの監視役も兼ねていた。
やや硬い表情なのが、ユルゲンには非常に気になった。
ユルゲンは終始無言だったので、クゼ大尉が思わず問い返した。
「ベルンハルト大尉。
奥さんが、どうかしたんですか」
クゼは、ユルゲンの喉がヒューとなるのを聞いた。
青い顔をした参事官の話だと、こうだった。
マライが、砂漠を見に行くと言い残して、姿を消したという。
チャイナレイク基地の周囲にあるモハーベ砂漠は、広大な砂漠だ。
面積は、およそ81000平方キロメートル。
カリフォルニア州、ユタ州、ネバダ州、アリゾナ州の4州にまたがり、ほぼ北海道と同じ広さ。
気温は、年間を通して摂氏2℃から36℃に変化する過酷な環境だ。
山岳地帯や岩石、塩湖や川があり、多様性に富んだ砂漠である。
降水量が極端に少なく、水が飲めるような場所も、十分にない。
荒涼とした砂漠の中で行方不明になれば、助かる見込みはない。
参事官は、あまりの出来事に気が動転している様子だった。
戦術機の目の前だというのに、ゲルベゾルテに火をつけるほど。
ターキッシュの独特の癖のある煙が、周囲を漂い始める。
マライを探し出すのが最優先だ。
大使館や政治将校への報告は、どうにでも出来る。
落ち着いて、冷静に……
ユルゲンは、そう自分に言い聞かせた後、クゼの方を向いて。
「クゼ大尉、ジープを用意してもらえますか」
――ジープとは、馬力の強い全輪駆動の小型自動車の一車種。
軍用車両としては1940年代から1980年代まで米軍で使用された。
2020年現在、後継車両のハンヴィーが、その役割を担っている――
クゼは、納得しがたい表情を浮かべながらも、頷いた。
まもなくクゼが運転する車に乗って、マライの方に向かった。
クゼと共に、ユルゲンはマライの事を探した。
チャイナレイク基地は、小さい。
ノースアイランド海軍航空基地のように広くないから、移動にも時間がかからない。
ジープから飛び降りたユルゲンは、待合所
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