第0章
0 彼と武の先生。
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ーー……日本の路地裏、そこには1人の少年が身体に切り傷や青あざを作っており、手首も折れているという大怪我をして倒れている。
少年の名は“九十九 丈流”と言い、どこにでもいる普通の小学生であり、それなりの家族の下に生まれた。
しかし彼はある日、6年生の悪ガキ達が1人の男の子を肉体的痛めつけてイジメているのを見て、丈流は勇気を出して止めに入った。しかし、それが気に入らなかった悪ガキ達は丈流をリンチした上に、人気の無い路地裏に放置したのである。
「はぁ、はぁ……ぁ……誰、か……。」
死にかけていた丈流は、掠れるような声で助けを呼ぶが、その声は喧騒に掻き消されてしまい、さらに薄暗い路地裏では誰も丈流に気付かない。
静かに意識が薄れていく丈流。
そんな彼に1人の人影が歩み寄ってくる。
「あ〜ぁ、酷い事するなぁ、おい。」
「だ………れ………?」
丈流が声の主の顔を見ようとするも、怪我の痛みによって薄れていく意識に飲まれて気絶してしまう。
声の主はそんな彼に手を伸ばすのであった……。
◆◆◆
「ぅ……ん……。ここ、は?」
「おぉ、気がついたか?」
丈流が目を覚ますと、そこは木造建築の建物の中らしく、自分はそこに敷いてある布団の上で寝ていたらしい。
そんな彼に声を掛けたのは、長い白髪を後ろで結んでいる青年であった。
知らない彼に丈流が警戒していると、青年は快活に笑う。
「ははっ。まぁ知らない奴が目の前にいたら戸惑うよな?俺は月村 八鹿。しがない武術家だ。宜しくな。
しかしお前、手酷くやられたな。治療が間に合わなかったら死んでたぞ。」
「手酷くって……まさか、助けてくれたの?」
「まぁな。あのまま放っておくのも偲びなかったしな。……さ、雑炊できたぞ〜!」
鍋から椀に雑炊をよそい入れると、丈流はその雑炊をしばらく見て八鹿にお礼を言ってから、スプーンで雑炊を掬って食べる。
トロッとしていながらも、ほんのり蟹や海老の出汁の味がする雑炊に気持ちが温かくなると、丈流は俯いて涙を流し始めた。
「ぅ……うぐっ………!ひぐっ、えぐっ……!」
「悔しかったな。自分は1人なのに相手は多人数でだなんて。世の中、あぁいうふうな連中はわんさかと居るんだ。それに立ち向かったんだ、格好いいと思うぞ?」
「ひっぐ……!ありがとう、ございます……!
でも、僕は……!」
「確かに負けたな。でも生きてたんだ。
それに生きてたんなら、次は負けないようにすれば良い。」
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