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神々の塔
第七十三話 狼の遠吠えその七

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「殺す」
「まさに殺人鬼や」
「殺人鬼こそね」
 そうした輩こそというのだ。
「問題よ」
「狼よりもな」
「そしてモンスターよりもね」
「そやな」
「ジェヴォダンの野獣は殺人鬼になるわ」
 十八世紀のフランスに出たこの謎の多い生きものはというのだ、この頃のフランス王はルイ十五世だったが王自ら退治を命じている。
「この考えやとね」
「そやな、まさにな」
「殺人鬼よ」
「そやから問題やな」
「野獣は狼とはね」 
 アレンカールは難しい顔で話した。
「あたいもね」
「思えへんな」
「どう見たって狼の習性やないから」
「人を襲わへんのが狼やのにな」
「若し家畜と人が一緒にいたら」
「狼は絶対に家畜を襲うな」
「狼少年もね」 
 嘘を戒めていることで知られているこの童話もというのだ。
「実は家畜は襲われて」
「狼少年自体は襲われてへんな」
「それが本来よ」
「そやな」
「あっちの版画じゃ襲われて」 
 その狼にだ。
「首だけになって生首を咥えられてるけれど」
「有り得へんな」
「そうよ、狼は家畜を最優先してね」 
 人と家畜が一緒にいればだ。
「襲うわ、そして人が棒を振り回しもしたら」
「逃げるか唸って歯向かうな」
「そうするから」
「あの野獣みたいに人を優先して襲うとかな」
「有り得へんわ」
 絶対にというのだ。
「ほんまね」
「そやな」
「そやからあの野獣はね」
「狼やなくてな」
「少なくとも野生のね」
「訓練されてるとや」
 リーがその場合について話した。
「狼から犬になってな」
「犬も訓練したら人を襲うな」
「軍用犬も戦うやろ」 
 シェパードやドーベルマンの様な種類を念頭に置いて話したがブリヤードの様な牧羊犬も用いることが可能である。
「そやからな」
「狼も訓練したらやな」
「人も襲う、しかしな」
「もうそうなるとな」
「自然やなくてな」
「普通の狼やないな」
「そして人を襲って殺して回るなら」
 そうした行動を採るならというのだ。
「殺人鬼や」
「それで野獣は殺人鬼やな」
「私はあの野獣は生物学的にも狼やないと思ってるが」 
 それでもというのだ。
「殺人鬼であるとはな」
「思ってるな」
「そして一番危険なんはな」
「殺人鬼や」
 芥川は言い切った。
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