第五章
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な。実際にあの方はな」
「はい。その御心が」
陰に覆われて沈みきっていた。だからこそだったというのだ。
「僭越ながらああして」
「そのことに礼を言う。まことにな」
「左様ですか」
「あの方はもう黄昏に入られている」
ただ退位しただけではなかった。そして年齢のことだけでもなかった。
その心もまた、張もその心を見ていたからこその言葉だった。
「せめてその黄昏がな」
「少しでもですか」
「救われたままな。そうしてな」
「過ごされるとですね」
「いいと思う。全ては昔のことだが」
梨園のことも楊貴妃のこともそして賑やかだった長安も。その全ては昔のことになっているがそれでもだというのだ。
「その昔のことを思いあの方の黄昏が少しでも救われるならな」
「それでいいですね」
「そう思う」
こう言いながら長安を後にする。二人が見る長安は確かに寂しくなっているがかつての賑やかだった姿も思い出して微笑む。黄昏の中にあっても幾分か楽しさを見て二人も幾分か救われた気持ちになって成都に戻った。玄宗のことも気遣いながら。
梨園の夢 完
2012・8・31
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